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仕事を教える

 以前「徒弟制度」が究極の仕事の教え方だとこのメルマガに書いた。TWIを推進する立場にありながら、矛盾しているではないか、と言うご指摘は今のところいただいていない。心優しい読者様に感謝している(笑)

自分でも矛盾している様に見える議論を再検討してみた。
徒弟制度が伝えるのは、仕事に対する心構えから入り、生き方までを教えるモノだと考えている。一方TWIが目指すのは、誰がいつやっても同じ様に作業出来る様にする事だ。教えるのが「仕事」である場合と「作業」である場合の違いと言えるだろう。

例えば、量産をする工場では、製品の完成図面を見て作業する事は無い。製品の完成図面を作業単位に分解した作業指導書を見て作業する。ここまでやっておけば、作業を教える事は簡単になる。作業がバラつかない様に教える方法を考えれば良い。こういう事をフォーマット化したのがTWI-JIだ。

例えば金属加工の図面には、加工後の完成状態が描かれている。
実際に加工するためには、加工する材料の大きさを決め、加工する順番、方法を決める。ホンモノの職人はこの段取りが上手く出来る。
普通の作業員でもホンモノの職人と同じ様に作業出来る様に、段取りを手順化してしまえば良いのだ。

ではこのホンモノの職人の業を誰でもが出来る様にするにはどうしたら良いか。もしくはもっと高度な、設計とかデザインの様な仕事は、誰でもが出来る様になるのだろうか。

私は、電子工学を勉強した。しかし就職して開発部門に配属されても、製品の開発は出来ない。学校で学んだ専門知識以外に、修業期間が必要になる。
同じ開発部門でもソフトウェ開発には、ドイツ語や哲学を専攻した同僚がいた。専門知識が無くても、ソフトウェアの開発ツールの使い方を習得すれば開発が可能となる。
回路設計も同様に、ゲートアレイの様に論理設計さえ出来れば、開発ツールを使って回路を設計出来る様になる。

ソフトもハードもあるレベルまでならば、チョットした修業期間で設計出来る様になるだろう。しかし一流になるためには「センス」が必要だ。「センス」とは、感性とかひらめきとか言葉で伝えるのが難しいモノだ。言葉にし難いモノを教えるのは更に難しい。

仕事のほとんどは教えることができる。しかし「センス」を教える事は難しい。そして「センス」が、仕事の出来映えのほとんどを決めてしまう。「センス」は教える側よりは、教わる側が自ら磨くモノだと思う。「センス」を受継いで行くには、やはり「徒弟制度」の様な方法になるだろう。


このコラムは、2015年3月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第416号に掲載した記事です。

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