究極の教え方


 先週土曜日に第一期TWI導入サポート企業様のキックオフミーティングを開催した。何度でも再現できる教え方を習得し、教え方を標準化することにより、指導者が変わっても、作業員が変わっても、作業がバラつかない様にする。これがTWI-JIの目指すところだ。「科学的職業訓練」と言う名前を付けてみた。
これと対極の位置に有るのが「伝統的職業訓練」だと考えている。伝統的職業訓練とは「徒弟制度」の事だ。

TWIの導入を推薦している私は、徒弟制度を否定しているかと言うと、実は逆で徒弟制度は究極の職業訓練だと考えている。師匠の元に住み込み、弟子として、便所掃除からお茶汲みまで仕事と関係のない事から叩き込まれる。効率は非常に悪い。しかし徒弟制度で受継がれるのは、仕事の技術ではなく「魂」なのだ。師匠の命は限りが有る。いつかは亡くなる。しかし師匠の魂は弟子達によって次の世代へと受継がれる。そしてそのまた次世代の弟子へと受継がれて行く。

徒弟制度は、師匠の「業」をその魂と一緒に、大河の如く未来に受継いで行くためのシステムなのだ。

しかし我々の様に、工場でのモノ造りに関わっている者にとっては、徒弟制度は効率が悪すぎる。ほとんどの従業員が出稼ぎであり、3年で全員入れ替わる様な職場で「匠の業」を人生をかけて受継いで行く訳にはいかない。科学的職業訓練に頼ることになる。

私には、中国人の弟子がある。さすがに寝起きまで共にする訳には行かないが、そういう人達には、自分の全てを伝えたいと考えている。そうすれば、私が死んだ後も、私が先輩から受継いだ経験や考え方が人々の役に立つはずだ。

こちらの本は、家具職人の秋山利輝氏の弟子の育て方が書いてある。
「一流を育てる 秋山木工の職人心得」秋山利輝著

書籍中にある秋山氏の言葉を以下に紹介する。
「技術がいくら一流でも、技術だけではすぐ追いつかれてしまいます。でも 心はすぐには真似できません。……
 感動してもらうモノ造りは、心が一流でないと出来ないのです。……
 「できる職人」ではなく、一流の心と技術を持った「できた職人」を育てたいのです。」


このコラムは、2015年3月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第414号に掲載した記事です。

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