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改善活動の目標と目的

 先週末は東莞和僑会の改善交流会を開催した。改善交流会は中国人幹部育成を狙い、会員企業の生産現場で改善活動を実践する。当日会場となった工場の中国人幹部が、改善事例・改善課題を紹介。会員企業のメンバーが小グループに分かれて意見交換。改善事例に対して更なるアドバイスをする。

先週訪問した工場は自動化に取り組み、従来の10分の1の従業員でより多くの利益を出している。
彼らが考えている改善課題のうちの一つに、自動化設備の騒音削減がある。最大で100dbほどの騒音を80dbまで落とすという明確な目標を立てている。

各チームは、この具体的な目標を達成するためのアイディアを検討した。

今回は、参加企業の日本人経営者、一般参加の日本人もチームを作り検討した。
日本人チームは、まず騒音を100dbから80dbに落とすという目標の検討から始めた。随分回りくどいと思われるかもしれないが、なぜこの目標を達成しなければならないかという目的を先に考えた。

騒音削減の目的は、作業員の健康保護、疲労軽減とした。
目的を明確にしたため、他のチームにはない改善アイディアが出た。
そのアイディアは「皆で歌を歌いながら作業する」だ。

あまり現実的なアイディアとは言い難いが(笑)目標だけを考えていれば思いつかないアイディアだ。

我々日本人経営者の発表は、笑いを取れたが(笑)勉強会に参加したメンバーに伝えたかったのは、「改善課題は正しいか」「改善課題の目的は何か」ということをまず考える必要がある、ということだ。

例えば、「完成品倉庫が狭い」という課題は、本来「出荷に合わせて生産出来ない」という課題かもしれない。改善改題を間違えると、効果を実感できないばかりでなく、本来の問題を隠すことになる。


このコラムは、2019年6月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第839号に掲載した記事です。

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改善思考

 先週末は東莞和僑会・改善交流会を開催した。改善交流会は参加企業の中国人幹部の改善力を鍛えることを目的としている。毎回参加企業の生産現場に集まり、その企業の改善事例を紹介。現場を観察。改善課題やさらなる改善を参加企業混合のメンバーでチームを作り議論、最後に発表する。という活動をしている。

今回は石碣鎮にある会員企業が会場。

3件の改善事例を紹介。
そのうちの1件の事例をご紹介したい。

接着テープ付きゴムマグネット素材の小片を生産する工程だ。
生産は帯状のゴムマグネットロール、両面接着テープ、保護紙を貼り合わせ、カットする。この作業は設備で行われる。この工程での改善事例は、段取り替えの短縮だ。
段取り作業の一部を外段取り化、作業開始前の調整作業の時間短縮などの改善をしたが、まだ改善目標を達成していない。

帯状のゴムマグネットロール、両面接着テープ、保護紙ロールを設備にセットする際に、重量物のマグネットロールをセットする場所が人の肩より上にあることに着目したチームが提案した方法が、目から鱗だった。

普通に考えると、アーム状の重量物ハンドリングの設備を使うことを考えるだろう。しかし彼らが提案した改善案は、軽量の接着テープロールを上にし、ゴムマグネットロールを下にセットするというアイディアだった。単純明快、目からウロコの改善案だった。

しかしこの方法では、小片に切り分ける時に接着テープが上部に来ることになり、接着テープの保護紙をカットしてしまい小片がバラバラになってしまう。従来方法ならば、接着テープが下側となるため、保護紙をカットしないよう調整可能だ。

重要なことは、ここで諦めないことだ。さらに方法を考えれば良いのだ。

改善の極意:「できない理由を考えるのではなく、できる方法を考える」


このコラムは、2019年9月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第879号に掲載した記事に加筆しました。

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目標設定

 先週末は、東莞和僑会「マネジメント塾・改善交流会」に出席した。

東莞和僑会年間会員企業の中国人幹部が参加して「方針管理・目標管理勉強会」を3年間開催した。各社の幹部・中堅中国人社員の育成を目的としている。
方針管理・目標管理の展開方法を年間を通して実践する勉強会だ。
方針・目標を達成するための現場力を鍛えるため、2年目からは順に会員企業の現場で開催している。現場で交流することにより、相互に学び合う事を目的としている。

この勉強会を通して中国人幹部の知識向上だけではなく、目標達成のコミットメントが格段に上がった。総経理から与えられた目標ではなく、自ら決めた目標だ。他人事ではなくなる。

4年目の今年から、更に内容を深め各社テーマを決めて現場の改善事例を相互に発表する形とした。今年の参加企業は5社だ。改善事例を聞きその現場を見学しディスカッションする形式だ。

ディスカッションが想定以上に活発となり、時間が押してしまうという嬉しい誤算があった。多分今までに他社の現場を見学し、改善事例を話し合うという経験がなかったのだろう。

その後各社混合で3チームに分けて取り組むべき課題をディスカッションし、発表。その後社内で議論して取り組む改善課題を決定してもらう。

交流会の中で改善目標の立て方について考えて見た。
年度計画を立て改善活動をする時に、人員削減前年比〇〇%、不良損失金額削減〇〇%という目標を立てるのが一般的だと思う。

生産性向上、多能工化などの具体的改善施策の結果を評価する時に人員削減を使う。同様に品質改善の評価に不良損失金額を使う。これは合理的だと思う。

しかしよく考えると、売り上げが下がれば必然的に人員削減をしなければならない。または売り上げが上がれば、不良率を下げても損失金額が下がらない事がありうる。

売り上げ金額も年度計画に入っているだろうが、計画は計画だ。市況により売り上げ金額は左右されてしまう。売り上げ金額は自社だけではコントロールできない。市場や顧客による影響が大きい。改善活動を実践する部門にとって追い風にも向かい風にもなりうる。

極端なことを言えば、不良損失金額をゼロにするための最も簡単な方法は生産しない事だ(笑)

例えば人員削減を目標とするではなく、一人当たりの生産性を目標とする。
損失金額を目標とするのではなく、損失金額を売り上げ比率で目標とする。
こういう目標であれば、追い風、向かい風の風向きに関係なく改善の評価が出来るだろう。


このコラムは、2019年3月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第798号に掲載した記事を改題・加筆しました。

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