儲かる工場」カテゴリーアーカイブ

【儲かる工場の作り方】第三話「ムダ取り」

兵不血刃
兵法「兵不血刃」
 敵も見方も流血なく戦争を勝利できれば,これに越したことはない.これを工場に当てはめて考えるとどうなるか?
 兵器(設備)の導入というのは資本の投下を必要とし,一種の「流血」だろう.固定費の増加が損益分岐点の上昇となり,簡単に流血すること(赤字)になる.
 あらゆるムダを取る事が必要だ.ムダ取りをしないで機械化すると,ムダも一緒に機械化してしまう.
動作のムダを取る
 手を伸ばす,振り返る,しゃがむ,歩く,あらゆる動作のムダを省く.工場で付加価値を生んでいるのは,原材料や半製品に「変化」を与えた時だけだ.前述の動作は付加価値を生まない動作である.
 例えば手を伸ばすことを止めれば1秒動作時間が節約できる.一秒を馬鹿にしてはいけない.作業員はこれを一日に何千回も繰り返しているのだ.
 動作のムダ取りをすれば作業員の疲労も軽減される.楽をして生産効率を上げる.これも「兵不血刃」であろう.
 動作のムダは作業員の動作をリアルタイムに観察することによって見えてくる.
ムダの集計で更に大きなムダ取り
更に,チョコ停,部材の欠品,部品の問題などによるライン停止
のムダも看える様にして改善する.
これらのムダはリアルタイムに観察をしても見えてこない.問題が発生したらすぐラインを止める.止まった理由ごとに停止時間を集計すれば,改善しなければならない点が明確になる.
ラインを止めるのは勇気が必要だ.現場は時間と量のプレッシャーにさらされて仕事をしている.ラインを止めたくないというのが人情だ.しかし問題が起こるたびにラインを止め改善する方が長い目で見れば有利となる.
私は,作業員はラインを止めるのが仕事,班長はラインが止まらないように改善するのが仕事,と教えている.つまり作業員は問題を発見・報告するのが仕事.そのため作業員にはライン停止のボタンを持たせる.班長は問題が再発しないように改善するのが仕事,というわけだ.
プロダクションレコーダを使いライン停止時間と理由をPCに集計する.集計の結果から前工程や部材業者の問題も見えてくる.設備のチョコ停,遅配,品質不良など理由にあわせて改善を進める.プロダクションレコーダは生産数量管理だけではなく,改善の小道具として使う事ができる.

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2009年8月号に寄稿したコラムです.

【儲かる工場の作り方 】 第二話「ローコストオートメーション」

ローコストオートメーション
兵法「草木皆兵」
 以前ワールドカップサッカー予選で,アウェーで戦う日本代表の応援団は両手に膨らませた青いゴミ袋を持って応援したという.応援団席が青一色に染まれば,大勢の応援団が詰め掛けているように見える.アウェーの不利な戦況を一掃しようというわけだ.
 これは「草木皆兵」を兵法として応用した戦術だろう.この戦術が工場にも応用できるだろうか?
人海戦術は時代遅れ
 先日訪問した工場は,製品の組み立てラインにたくさんの作業員が並んでいた.しかしよく見ると三人に一人しか作業をしていない.どうもこの工場の中国人経営者は「草木皆兵」の戦術で我々を感心させようと考えたようだ.
 しかし人海戦術でのモノ造りは既に時代遅れだ.中国はもはやローコスト生産国ではない.いかに省人化し効率を上げてモノ造りをするかが鍵となる.
 品質についても同様だ.ヒトのばらつきが作業のばらつきになる.作業のばらつきが品質のばらつきだ.従って作業員が多ければ多いほど品質のばらつきも大きくなる.
 では完全自動化ラインを作って作業員を極力排除すればよいかというとこれもまた違う.
自働化でローコストオートメーション
規格商品が売れた時代は,同じ物を大量に生産していればよかった.しかし消費者の嗜好が多様化した現在は規格商品を大量に生産しても安価でしか売れない.
消費者の好みの変化に合わせ売れる分だけを生産する.このような生産には完全自働化ラインは向いていない.高い投資をして導入した設備だ.経営者はどうしても投資効率が気になる.「稼動率を上げろ!」と号令をかけて売れない物を大量に作ることになる.
稼動率を決めるのは工場ではない.稼働率はお客様の注文が決める.工場が決める事ができるのは「可働率」だ.
可働率を高めるために,ヒトの働きと機械の動きを調和させる.これがニンベンの付いた「自働機」だ.ヒトが主役になって設備が動く.これが自働化だ.そしてそれを安い設備で実現するのがローコストオートメーションだ.
コストの安い材料,設計を使って設備の導入コストを抑えるのはローコストオートメーションとは呼ばない.「自働化」の思想を盛り込んだモノがローコストオートメーションである.
例えば三人の検査員が分担していたのを半自動検査機に置き換える.検査員は検査時間の手待ちの間に別の作業をする.これで四人の作業員を一人に省人化できる.

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2009年7月号に寄稿したコラムです.

【儲かる工場の作り方】第一話「まずは看える化」

疾風勁草

新連載にあたり
 世間では世界的な経済不況とか百年来の不況などと騒がれている.不況の嵐により,受注が大幅に減り経費節減,一時帰休など守りの経営に縮退する企業が多い.
 しかし今がチャンスだと考えている.生産量が落ちている今こそ儲かる工場に転換するチャンスだ.「時節到来」ピンチをチャンスに変えよう!そんな思いで儲かる工場の作り方を四文字熟語と一緒に一年間コラムに書かせていただくことになった.
経営者の思いを看える化
 まずは吹き荒れる嵐の中で経営者の強い思いを看える化しなくてはならない.ここで注意いただきたいのは「みえる」を「看える」と表記している点だ.どこかを探すと見えるのではなく,日々向こうから目に飛び込んでくるように看えなければならない.つまり「看板」の「看」だ.
 経営理念,経営ビジョンを従業員,顧客,取引先など関係者全員に看えるようにする.経営者の思いを全従業員と共有することにより,組織力はアップする.
工程も看える化
 生産の状況も看える化しよう.今工程がどういう状況になっているのかをリアルタイムで看える化する.コンピュータの中に入っているのではダメだ.これでは現場の作業員には見えない.
 現場の作業員・班長が一目してわかるようにする.何か問題が発生すれば直ちに看えるようにする.
例えば生産計画に対する実績を,現場のホワイトボードに記入して看える化している工場が多い.
しかしこれでは過去二時間の集計結果しか分からない.過去二時間の間に問題が発生し生産計画が達成できなかった事が分かっても手遅れだ.
 これをリアルタイムで看える化する.何か問題が発生し生産実績が計画に対してマイナスになれば,すぐに赤信号が出るようにしておく.そして班長には問題が発生するたびに問題解決・改善をするように指導する.
 問題が発生したとき「並」の班長は作業員をせかし生産量を上げようとする.「中」の班長は問題が発生した工程を手伝う.「上」の班長は問題が発生した工程を改善して次から問題が発生しないようにする.
 問題点を常に看えるようにしておくことにより「上」の班長を育てる事が出来る.これが日々改善の現場力源泉となる.
 

本コラムは香港,中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2009年6月号に寄稿したコラムです.