チップセラミックコンデンサの信頼性不良としてショートモードの故障があります.
今回はクラックによるショートモード不良について紹介します.生産時の製品検査で発見できずに,エンドユーザで使用中に発生する厄介な故障モードです.
セラミックコンデンサは,非常に薄いセラミック板に銀ペーストで電極を構成し,これを何枚も積層して作ってあります.
非常に薄いセラミック板なのでガラスと同様簡単にクラックが入ってしまいます.
例えば,部品を落とす,プリント基板の角が当たるくらいでクラックが入ります.
意外と気がつかないのは,PWBに実装した状態で,PWBにひずみを加えただけでセラミックコンデンサにクラックが入ります.
上の図のようにセラミックコンデンサを実装した状態でPWBに歪をかけた場合,90mmの間隔で0.5mm変位をつけただけでクラックが入ってしまいます.
したがってPWBを分割するときのV溝のそばにチップコンデンサがあると,分割の際の力でクラックが入ります.
またPWB固定用のねじ穴のそばにチップコンデンサがあれば,ねじを締結する力でクラックが発生します.
極端な場合は,実装後のPCBを片手で端を持ったときに,自重でPCBがそりチップコンデンサにクラックが入ったという例もあります.
セラミックコンデンサにクラックが入った場合,クラックの大きさによりコンデンサが完全にオープンになる,容量値が小さくなる,という不良になります.この状態で検査をして見つけることができればよいのですが,ノイズフィルタとして電源ラインに入れるような用途では,検査では見つけられません
しかも悪いことにこのままの状態で通電するとクラックを通して銀ペースト電極が直流電界でバイアスされて向き合うことになります.この状態で使用し続けると銀がマイグレーションしてショートします.電源バイパスとしてセラミックコンデンサーを使った場合,ショートされるのは電源ラインとグランドなので,インピーダンスが低く発熱,発煙するまで電流が流れ続ける場合があります.
電圧が高ければマイグレーションも加速します.ディジタル回路(3.3V,5V)よりもアナログ回路のバイパスコンデンサとして使用した場合のほうが不良が発生する期間は短くなります.