中国の工場を見ていると、日系、台湾系、大陸系問わず部門ごとに「蛸壺化」しており、部門間の協力・協調が見られないことが有る。
以前に指導した自動車部品工場は、前工程のプレス工程で加工した半完成品を後工程の転造工程で加工して製品を生産している。プレス工程の方が生産能力が高いため、転造工程の前には半完成品の中間在庫がたまる。
プレス工程は後工程の都合を考えず、自分の都合だけで全力で生産する。
そのため、中間在庫がふくれあがり従業員食堂にまで半完成品を置く様になる。その結果、従業員は食堂が使えなくなり、職場の加工機械の横で食事をする事になる。それでも相変わらず次工程の都合を考えずに生産を続け、経営者は外に倉庫を借りる事を考えはじめる。
購買部門は、受注に従いどんと発注をかける。一気に納入された材料は倉庫に格納される。生産計画は、注文書の納期に合わせ生産計画を立てる。その結果倉庫から生産計画に合わせ、材料が一度に出庫される。プレス工程はすぐに生産完了し、中間在庫に積み上げる。各職場が、自分の都合しか考えていない。
後引き生産にすれば、このような事は発生しない。
しかしロット単位でまとめづくりをしていると、後引き生産のメリットが中々理解出来ない。いきなり小ロットで平準化生産しようと、指導しても理解して貰えない。材料の小口出庫が無駄、段取り替えがムダ、などなど100個もデメリットを並べ立てる(笑)
こういう時に、各部門の代表者に集まってもらって、各自の都合を話し合って貰う。これで上手く行くなら、とっくに問題は無くなっている!と言う声が聞こえてくる(笑)
続きが有る。
もちろん各自の都合を主張してもらっても,上手く行くはずはない。
各自の都合を話し合った後に、役割をチェンジしてもらい相手の立場で議論をしてもらう。
例えば、プレス工程、出庫係が立場を入れ替えて、議論する。
プレス工程の役割をしている出庫係は「一度に出庫されると、プレス工程現場に材料の置き場所がなくて困る」と言う。
「そうは言っても、何度も出庫作業をすれば効率が悪くなる」と出庫係の役割をしているプレス工程が反論する。こういう議論で、プレス工程の責任者が、プレス工程が自分で倉庫に材料を取りにいくと言うアイディアを思いつけば、大成功だ。
いかがだろうか?
この方法は、工場経営の師匠・原田師が実施していたジョブローテーションから思いついた。
原田師は管理職を定期的にジョブローテーションさせていた。製造部長が、購買部に異動になる。こういう事を頻繁にしていた。幹部は皆他の職場を経験しているので、相手の気持ちがわかっている。そのため部門間の対立は、簡単に調和出来る。
模擬ジョブローテーションとして,役割を変更してディベートをしてみたら上手く行くのではないかという発想だ。
まだこの方法を試した事はない。
もし試された方が有れば、是非ご一報いただきたい。
このコラムは、2016年3月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第469号に掲載した記事に修正・加筆しました。
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