トヨタ出身の方と話をしていて、腑に落ちないことがあった。その方は直接労務費は固定経費に分類されると言われた。
固定費は製造原価の中で、生産量によって変動しない部分の経費をいう。
例えば工場の家賃、設備の減価償却費などは固定経費に分類される。直接工の労務費は生産量によって変動するので変動経費と考えるのが一般的だと思っていた。
直接労務費を固定経費に分類する理由を尋ねると、車の塗料も固定経費であると言われる。塗料は生産台数によって変動する。当然変動経費だと思っていた。ますます意味がわからなくなる。
重ねて質問すると、以下の答えが返ってきた。
車の塗料は一台分の量が必要であり、改善によって減らすことはできない。直接工のアワーレートも固定であり改善はできない。だから固定経費である、という理屈だ。
アワーレートは経費ではない。労務費=アワーレート×作業時間が経費であり、改善により作業時間は短縮できるはずだ。納得がゆかず考え込んだ。
トヨタの考え方は、改善できる経費は変動費、改善できない経費は固定費と分類している。それは現場の人間にも改善対象がわかるようにするためではなかろうかと思い至った。
確かにその方が作った原価費目のリストには、直接労務費は固定経費分類されており、労務費ではなくアワーレートが書いてある。
直接工のアワーレートは改善対象ではないが、作業時間は改善対象である、という考え方なのだろう。
トヨタ流というとJIT、カンバンなどが注目されるが、こういう地味な所にもこだわりがあるのかもしれない。
このコラムは、2019年4月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第816号に掲載したコラムです。
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