国土交通省によると、千葉県柏市の東大柏キャンパスの総合研究棟(地下1階地上6階建て)で11日午後、シンドラーエレベータ社製のエレベーター(定員19人)が扉が開いたまま、1階から地下1階方向に下降した。かごを脱出しようとした男子学生1人がひざを打撲して軽いけがをした。同省が16日発表した。
同省の調べでは、1階から18人が乗り込んで上昇するはずだったが、いきなり下降を始めた。あわてた学生が1階フロア側に脱出しようとした際、かごが下がって生じた段差に足を引っかけ、けがをしたとみられる。事故機は保守点検もシンドラー社が請け負っていたが、原因は不明という。同省はシンドラー社に対し、同型のエレベーターでブレーキに異常がないか点検するよう指示した。
(asahi.comより)
Wikipediaによると,シンドラー社のエレベータは,扉が開いたまま上昇または下降,乗客の閉じ込めなどの事故が多いようだ.大阪府の西成警察署では,署内に2基あるエレベータのうち1基が,無人のまま最上階の7階まで上昇し,天井に衝突して停止すると言う事故が起きている.
国土交通省はブレーキの異常を点検するように指示をしているが,2007年に東京都港区が実施したシンドラー社エレベーターの電磁ノイズ耐性調査によると,電磁ノイズ耐性が低いことが分かっている.
今回の事故も,制御回路がノイズにより誤動作したのではないだろうか.
エレベータの構造を考えると,携帯電話から発する高周波電磁ノイズよりは,エレベータ自身に内蔵している,リレーやソレノイドから発生するバーストノイズ(低周波電磁ノイズ)の方が,影響を与えやすいと思われる.
このようなノイズによる誤動作は,電機・電子製品業界では既に30年ほど前にメカニズムを解明し,対策も確立したと考えていた.このメーカでは,これらの技術がエンジニアの世代を超えて伝承できなかったのではないだろうか.
ノイズ対策技術などは,世間から注目を浴びるものではない.ノイズによる誤動作を止めたとしても,それで当たり前のレベルになるだけだ.このようなあまり報われない技術がきちんと社内に蓄積され,世代を超えて
伝承されなければ,10年,20年のスパンで同じような不具合が繰り返し発生することになる.
このコラムは、2010年8月に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第180号に掲載した記事を修正加筆したものです。
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