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設計ノウハウの蓄積

 最近,設計部門を持つ顧客の指導をする事が多くなった.
中国企業の指導が多くなった事も理由の一つだが,日系企業も製造部門だけではなく,開発部門を持つ工場が増えているように思う。

中国の低価格な労務費を期待して,製造コストダウンのために中国に進出した日系企業が多い訳だから,元々設計部門は日本の本社にしかなかった.それでも,日本向けの製品を製造する,日本で生産経験のある製品を中国で製造するだけならば,特に難しい事はない.

しかし,中国の市場向けの製品を開発・生産したい,日本国内では生産経験がなく中国で試作・量産をする,など生産の形態がどんどん変わっている.中国工場にも開発設計機能が必要になって来た.

中国企業同様,日系企業も中国での開発設計の品質保証に苦労をされている.設計で決まってしまう機能・品質・コストは,製造部門では改善しようがない.

設計ミスがあれば,品質・コスト・納期ともに深刻な影響を受ける.製造がちょっと頑張って残業をしたくらいでは,取り返しがつかない.

当然設計部門は,図面が製造部門に渡る前に,検証・レビューをしている.しかし現実的には,設計部門の責任者が,図面の承認欄にサインをした所で設計品質を保証出来る訳ではない.全ての設計品質を,責任者が確認出来る訳でもない.
設計者自身が設計品質を保証出来ていなければ,設計検証は,設計のやり直しと同じ時間を必要とする.

実は自分も,設計エンジニアだった頃同様な問題に直面していた.
開発初期には,ソフトウェア開発者のデバックのために,試作ハードウェアを提供しなければならない.我々ハードウェア開発チームは,試作機を提供し維持しなければならない.
「維持」とは奇妙な言い方かもしれないが、次のような事情による。
開発初期に設計したプリント基板には,いくつかミスが含まれている。ソフトウエアの開発スケジュールを確保するため、ミスはプリント基板への手加工で修正される.手修正箇所が原因となり,ソフトウェア開発中に試作機がしばしば故障する(苦笑)
その度に我々が呼び出され,故障箇所を見つけ修理をしなければならない.こう言う作業を繰り返していると,自分たちの開発作業の時間が無くなる,と言う悪循環に陥る.

こう言うネガティブサイクルから抜け出すために,我々がとった対策は,DRC(コンピュータによるデザインルールチェック)と設計チェックリストだった.チェックリストなどと言う超アナログ手法だが,大いに効果を発揮した.

技術試作機のミスが初版からほとんど無くなり,ハードウェアエンジニアの試作機の「お守り」作業がほとんど無くなった.その結果設計検証に十分時間をかけても開発期間は短くなった.ネガティブサイクルは,一気にポジティブサイクルに変換された.

設計チェックリストそのものが,設計ノウハウの蓄積となる.
この仕組みを上手く回すためには,チョットした工夫が必要だが,効果は高い.設計部門をお持ちの方はぜひ試していただきたい.


このコラムは、2013年5月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第308号に掲載した記事に加筆修正しました。

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