直流電界がかかっている状態で,塩素,臭素,燐酸などのコンタミネーションがあると,配線パターンの金属原子が移動してしまい断線する現象を,イオンマイグレーションとか,ケミカルマイグレーションと呼んでいる.
今日は抵抗器のケミカルマイグレーションの事例をご紹介する.
金属皮膜抵抗をPCBに実装し,対振動性,耐衝撃性の要求から接着剤で固定していた.この接着剤を変更した時に,信頼性試験により,抵抗が断線するものが見つかった.
写真1は不良抵抗の外観.右側にうっすら黄色く変色している部分が接着剤で固着していた箇所.
写真2は不良抵抗のエポキシ外皮を剥がしたもの.金属皮膜の抵抗パターンが,マイグレーションにより喪失している.写真では左右反対になっているが,固定用の接着剤が付着していた部分を中心にマイグレーションが発生している.
接着剤に含まれるハロゲン系の成分が抵抗内部を汚染し,触媒となり直流電解が印加された抵抗金属皮膜間でマイグレーションを促進させたものと推定している.
ケミカルマイグレーションは触媒となるコンタミがあれば,直流電界の電圧,温度,で加速される.
この事例は,固定用の接着剤を変更したときの信頼性評価で発見できた.
もし信頼性評価を実施していなければ,エンドユーザが使用中に不良となったはずである.バケ学要素の強い材料を変更する場合は,信頼性評価をきちっとしておくべきだ.