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ケミカルマイグレーション:抵抗の断線

直流電界がかかっている状態で,塩素,臭素,燐酸などのコンタミネーションがあると,配線パターンの金属原子が移動してしまい断線する現象を,イオンマイグレーションとか,ケミカルマイグレーションと呼んでいる.

今日は抵抗器のケミカルマイグレーションの事例をご紹介する.

金属皮膜抵抗をPCBに実装し,対振動性,耐衝撃性の要求から接着剤で固定していた.この接着剤を変更した時に,信頼性試験により,抵抗が断線するものが見つかった.

写真1は不良抵抗の外観.右側にうっすら黄色く変色している部分が接着剤で固着していた箇所.

ケミカルマイグレーション

写真1:断線抵抗の外観

写真2は不良抵抗のエポキシ外皮を剥がしたもの.金属皮膜の抵抗パターンが,マイグレーションにより喪失している.写真では左右反対になっているが,固定用の接着剤が付着していた部分を中心にマイグレーションが発生している.

ケミカルマイグレーション

写真2:不良抵抗の断線箇所

接着剤に含まれるハロゲン系の成分が抵抗内部を汚染し,触媒となり直流電解が印加された抵抗金属皮膜間でマイグレーションを促進させたものと推定している.
ケミカルマイグレーションは触媒となるコンタミがあれば,直流電界の電圧,温度,で加速される.

この事例は,固定用の接着剤を変更したときの信頼性評価で発見できた.
もし信頼性評価を実施していなければ,エンドユーザが使用中に不良となったはずである.バケ学要素の強い材料を変更する場合は,信頼性評価をきちっとしておくべきだ.

チップセラミックコンデンサのショート故障

チップセラミックコンデンサの信頼性不良としてショートモードの故障があります.
今回はクラックによるショートモード不良について紹介します.生産時の製品検査で発見できずに,エンドユーザで使用中に発生する厄介な故障モードです.

セラミックコンデンサは,非常に薄いセラミック板に銀ペーストで電極を構成し,これを何枚も積層して作ってあります.

チップコンデンサ断面図

非常に薄いセラミック板なのでガラスと同様簡単にクラックが入ってしまいます.
例えば,部品を落とす,プリント基板の角が当たるくらいでクラックが入ります.
意外と気がつかないのは,PWBに実装した状態で,PWBにひずみを加えただけでセラミックコンデンサにクラックが入ります.

チップコンデンサにかかる応力

上の図のようにセラミックコンデンサを実装した状態でPWBに歪をかけた場合,90mmの間隔で0.5mm変位をつけただけでクラックが入ってしまいます.

したがってPWBを分割するときのV溝のそばにチップコンデンサがあると,分割の際の力でクラックが入ります.
またPWB固定用のねじ穴のそばにチップコンデンサがあれば,ねじを締結する力でクラックが発生します.
極端な場合は,実装後のPCBを片手で端を持ったときに,自重でPCBがそりチップコンデンサにクラックが入ったという例もあります.

セラミックコンデンサ内部クラック

セラミックコンデンサにクラックが入った場合,クラックの大きさによりコンデンサが完全にオープンになる,容量値が小さくなる,という不良になります.この状態で検査をして見つけることができればよいのですが,ノイズフィルタとして電源ラインに入れるような用途では,検査では見つけられません

しかも悪いことにこのままの状態で通電するとクラックを通して銀ペースト電極が直流電界でバイアスされて向き合うことになります.この状態で使用し続けると銀がマイグレーションしてショートします.電源バイパスとしてセラミックコンデンサーを使った場合,ショートされるのは電源ラインとグランドなので,インピーダンスが低く発熱,発煙するまで電流が流れ続ける場合があります.

電圧が高ければマイグレーションも加速します.ディジタル回路(3.3V,5V)よりもアナログ回路のバイパスコンデンサとして使用した場合のほうが不良が発生する期間は短くなります.