東洋ゴム社長、月内にも「経営責任含め再発防止策」免震データ改ざん問題で衆院参考人招致
東洋ゴム工業(大阪市)が免震装置に使うゴムの性能データを改ざんしていた問題で、衆院国土交通委員会は8日、同社の山本卓司社長らを参考人招致し、集中審議した。山本社長は再発防止策について、外部に依頼した調査結果を5月中旬にも受け取った後、「経営責任の明確化も含め1~2週間で取りまとめたい」と述べた。自身の進退についても検討する考えを示した。
同委員会は開発担当の社員が不正に関わった経緯や、性能不足の免震ゴムを製造・出荷し続けた社内の品質管理などについて追及。山本社長は「建物の所有者ら国民の皆様に大変な心配とご迷惑をおかけした。おわび申し上げる」と改めて陳謝し、「企業風土の体質まで踏み込み、会社を立て直すという意欲で取り組みたい」と述べた。
(日本経済新聞電子版より)
中国で発生した四川汶川大地震の時は、学校が倒壊し多くの子供達が犠牲となった。日本の東日本大地震では被災者が学校で避難生活をしているのをTVで見た中国人達は、日本の耐震建築技術が高いのを羨んでいた。
台湾中部大地震後は、日本の制震・免震技術を導入する建物が増えたと聞く。
「地震大国」日本の技術は各国から尊敬を集めていたのだが、今回の事件で信頼を失ってしまったかも知れない。
今回は製品認可を受ける時に提出したデータに改竄が有った様だ。
同様な問題は、自動車のリコール隠しから期限切れ食材の使用まで色々な業界で発生して来た。そして多分全てのケースで、問題は明るみとなり、企業責任を追及されることになった。
実際には、我々が見聞きしている問題は氷山の一角だけなのかも知れないが、不正を隠したまま経営が繁盛する事はあり得ない。経営者にも従業員にも良心が有り、その後も清々と事業が発展して行く事は無いだろう。
安全、品質に優先する経営指標などは無い。
品質部門の責任者は、経営者と刺し違えても品質を守るくらいの気概が必要だ。
私は前職時代に品質保証部門長をしていた。
品質部長には、品質に疑義があれば出荷を停める権限が有り、それを覆せるのは事業部長だけだった。
当時の会社を今でも誇りに思っているが、全社員が品質に対して真摯な姿勢を持っていた。
当時、新製品の第一ロット生産の後に「出荷判定会議」を実施していた。
この会議の目的は、初回量産の出来映えから継続的に生産が可能かどうか、品質保証が可能かを判定する事に有る。
品質保証部長は、出荷判定を合格とし初期流動管理のフェイズに移行するか、又は不合格とし初回出荷を停めるかの二者択一の判断をしなければならない。
この出荷判定会議で、私は一度だけ出荷停止をしたことがある。
直行率(全ての工程内検査を一発で合格する率)が99.3%であり、合格基準を満たしていたが、0.7%の不良が全て同じ部品の同じモードの不良だった。
出荷判定不合格とし、翌日の初回出荷を停止した。そしてその足でお客様の工場に出向き事情を説明した。お客様に迷惑をかけられないので、該当部品は全てセカンドソース品と交換して再検査し出荷の準備を整えていた。
当然叱られる事は覚悟していた。しかしここまで説明し終えたら、お客様から「良くやった」と褒められた。
その後、部品メーカから不良解析報告があり、不良のトランジスターは設備の不調により、チップがリードフレームにきちんとボンディングされていない物が混入していたと言うロット不良だった。
このトランジスターは、製品の過電流保護回路に使用しており、我々の製品検査合格品の中にも不良のトランジスターは混入しており、環境温度によっては、早めに保護回路が働いてしまうことになる。
安全上は問題ないが、エンドユーザから見ると夏場に空調が壊れたオフィスで製品を長期間稼働させた時に、突然電源が切れた様な動作をすることになる。
出荷判定時には、不良原因もリスクの大きさも不確かだったが、私の出荷停止判断に異を唱える者は一人もいなかった。一番出荷したいはずの工場長も私の判断を支持してくれた。
この愚直さが品質を保証する者の姿勢だと思う。
どうせデータを少しくらい改竄した所で分からないだろう。
少しくらい賞味期限が過ぎていても味は変わらないだろう。
と言う考え方は、絶対に上手く行かない。
お客様は騙せるかも知れないが、自分は騙せないからだ。
このコラムは、2015年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第423号に掲載した記事に加筆しました。
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