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部品1個1円の商売から200億円企業へ 鯖江の零細

 アベノミクスの恩恵が地方まで届かないという声も聞くが、それならば自らの技術力を頼りに、世界を舞台に戦うことを選択した地方企業がある。福井県鯖江市のメガネフレーム製造・販売会社シャルマンだ。

◆80歳でも一人で海外出張

 元はメガネの部品を細々と作る下請け会社だったが、チタン合金の開発、加工・接合の高い技術を生かして、メガネフレームの完成品メーカーに脱皮。縮む国内市場から世界の市場で勝負するため、中国に製造拠点を設け、海外80カ国で販売する体制を構築した。

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(日本経済新聞電子版より)

 バブル崩壊以降出口が見えない不況が続いた。アベノミクスで景気回復の予感が芽生えたが、消費税増税でまた後退。ようやく大企業を中心に業績が上がった。中小・零細企業にも「トリクルダウン効果」の恩恵があると経済学者は言う。しかし待てど暮らせど、景気のいい話は自分の所には来ない。

そんな感覚の中小企業経営者が多い様に感じている。

しかしへこんでいる場合ではない。バブル崩壊も、増税も、一企業経営者が制御出来るモノではない。ここに業績不振の原因を求めれば、改善の方法はない。
少なくとも、バブル崩壊以降20年間経営を続けているのだ。会社には従業員がおり、電気もついている(笑)もっと自信を持って頑張っていただきたい。

今週のニュースは中小企業経営者に、夢と希望を与えてくれる様なニュースだ。

元々シャルマンは、眼鏡用の部品を生産していた。顧客から与えられた図面に従って部品を黙々と生産する。典型的な下請け工場だ。その彼らが、眼鏡のフレームの設計生産に取り組み始めた。

更に眼鏡素材のチタンの開発、チタンの加工技術の開発まで手を伸ばしている。中小・零細企業に研究開発など無理、と諦めればチャンスは一切来ない。彼らは大学の研究室と共同開発をしている。自分に無い力は、その力を持っている人を探し、仲間になれば良いのだ。

その努力の結果、1個1円の部品から1本数万円の自社ブランド眼鏡フレームの生産にシフトする事が出来た。売り上げ金額も利益も桁が変わってしまったはずだ。

更にその技術が異業種から注目され、脳外科手術用のハサミを生産することになった。当然手術用機材など作った事はない。福井大学と協業している。一社で為せぬ事も、志しを同じくする仲間があれば可能になる。そのためには、社外に目を向け交流を図る事だ。

鯖江は眼鏡の街だ。他にも平らに折り畳めるペーパーグラスを販売している西村金属がある。こちらの企業も元々眼鏡部品の加工を手がけていた。設計上のアイディアで、画期的な構造を持つ眼鏡を生産し、眼鏡の本場ミラノの展示会で評価を受けた。その後生産が追いつかずに3ヶ月待ち状態が続いていた。(生産体制が整った様で、最近は3日で出荷出来るそうだ)

以前にご紹介した、造船不況に悩んでいた中島プロペラが、その加工技術を活かして人工関節を生産するナカジマメディカルを興している。きっかけは、船舶スクリューの加工工場を見学に来た医学部教授の一言だったそうだ。

まずは小さな一歩として、社外との交流をされてはいかがだろう。


このコラムは、2015年1月19日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第407号に掲載した記事です。

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社外活動

 中国に住んでいると日本のTV放送は見ることができない。昨年の9月までは、中国の映画・TVドラマサイトで日本のTVドラマがアーカイブされていた。私としては珍しくNHKの大河ドラマを一気に見たりした(笑)しかし「島問題」以降、日本の映画・TVドラマは全て削除された。

最近偶然中国の動画サイト『優酷』に「カンブリア宮殿」がアーカイブされているのを発見した。当然著作権を無視した違法なモノだと思うが、情報難民(笑)の我々には、天の救いの様な存在だ。

多分中国国内からしかアクセス出来ないと思う。
カンブリア宮殿は、ただ娯楽としてみても楽しいが、アンテナが高い人には沢山の気付きを与えてくれる番組だ。製造業以外の事例も多いに参考になる。

前置きが長くなったが、カンブリア宮殿で取り上げた「ナカジマメディカル」が面白かった。私が着目した部分を紹介したい。

ナカジマメディカルと言うのは、人工関節を生産している会社だ。
元々船舶のプロペラを生産していた会社が、造船不況時の経営多角化戦略により生まれた会社だ。

プロペラの生産で重要な技術は金属の表面研磨だ。
現場の匠による研磨技術が、プロペラの性能を決める。こうした技術が人工関節生産の差別化要因となる。それを指摘したのは、プロペラの生産現場を見学した医療関係者だ。

人工関節の骨の部分に当たる金属の平滑度をあげれば、関節の軟骨として使用するプラスチックの摩耗を防ぐことができる。プラスチックが摩耗すると、交換のために再手術が必要となる。
そのため金属の鏡面仕上が、人工関節の寿命を延ばし、患者の再手術と言う苦痛から救うことになる。

しかしプラスチックの寿命向上には、耐摩耗性だけでは達成出来ない事が判る。体内に入ったプラスチックは、酸化することにより劣化してしまう。ナカジマメディカルには、プラスチックの酸化劣化に対応する技術はない。

そこで彼らは何をしたか。
異業種の研究者を集めて、研究会を始めたのだ。元々金属加工は本職だ。工学部、医学部の研究者を集めた研究会で、プラスチックの専門家から抗酸化のためにビタミンEを添加すると言うアイディアが生まれ、それを実用化した。

中堅・中小企業は全ての技術開発をする事は不可能だ。足りない技術は、外部から集める。こういう発想が重要だ。

私が会長を務める東莞和僑会では、異業種間での交流を目指し、工場見学会を企画している。そしてそれを一歩進めて「ソーシャルモノ造り分科会」も開催している。まさにナカジマメディカルの研究会と同じ目的だ。

実は「ソーシャルモノ造り分科会」はまだ具体的成果にはたどり着いていない。ナカジマメディカルの事例と比較して、成果が出せない理由を考えてみた。
分科会のテーマをまず絞り込む事が必要だと気が付いた。今の所メンバーの固有技術や、夢を語り合っているだけだ。早急にテーマを絞り込むフェーズに移行しなくてはなるまい。

この様に、社外にある技術やリソースとコラボして新しい価値を創造する。それにより、自社の新たな商品や事業に結びつける。こんな社外活動を組織化する、或は参加する事で中堅・中小企業が活性化することが出来たら最高だ。


このコラムは、2013年11月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第335号に掲載した記事です。

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