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災害復旧

 ラジオ番組でジャーナリストが台風19号関連のニュースにふれて、防災だけではなくそのあとの復旧にももっと目を向けるべきだ、という趣旨の発言をしていた。確かに自然災害の防災には限度がある。ならば被災後の復旧のやり方にも目を向けるべきだろう。

ジャーナリストのコメントは、ボランティア活動のノウハウを継承する仕組みが必要だという趣旨だ。

東日本大地震後のボランティア活動のニュースを聞いて目頭が熱くなったのを思い出す。阪神大災害後のボランティア活動がニュースとして着目されるようになったように思っている。

しかし救援に出向いたボランティアを受け入れ側の行政が活用できていない。ならば過去に経験がある人たちを有効活用しよう、とコメンテータは提案していた。

具体的には、過去に被災した地方自治体のOBが、被災地に出向き指導をするようにしてはどうか、というアイディアだ。

確かに過去に経験のない災害に遭った地方行政の職員がテキパキと復興活動を進められるとは考えにくい。被災経験がある自治体で復興活動をした経験を持つ先輩が応援に来てくれたら、心強いと思うだろう。

こういうアイディアに心から賛同する。
ノウハウを人で伝える、という日本的な手法だ。確かにマニュアルにまとめたノウハウにない、文字以上の情報は人を介して伝わるのかもしれない。

禅に「不立文字(ふりゅうもんじ)」という言葉がある。禅の教義は経典など言葉では伝わらない、という意味だ。

「不立文字」

マニュアルでアルバイトの仕事を管理しようとする現代的な考え方とは一線を画す日本的な仕事の伝承方式だと思う。わざわざ「不立文字」などと禅語を持ち出すくらいだから、日本的伝承方式に反対ではない。しかし効率が悪い。

本当にマニュアルではいけないのか?
我々がマニュアルで伝えたいのは、仕事の手順であり、それに関わる考え方である。禅の教義を伝えたいわけではない。

ディズニーランドの学生アルバイトは年間離職率90%でも、マニュアルにより顧客満足の高いオペレーションができている。
良品計画もムジグラムというマニュアルでオペレーションを記述している。

上手くいっているマニュアルと、残念なマニュアルの違いはどこにあるか?
確信があるわけではないが、マニュアルの作成・改定にマニュアルを使う人の関与がどれだけ反映されているか、というところが境目のような気がしている。

つまりマニュアルの作成や改定にどれだけ実作業者たちを巻き込めるかということに関わっていると思う。神託のごとく与えられたマニュアルより、自分たちの体験を元に作り、日々改定しているマニュアルの方が、きちんと守られるのではなかろうか。

10年前に決められたマニュアルでは、自分たちが作ったマニュアルとは言えない。しかし10年前に作ったマニュアルでも、自分たちの意見が反映され、日々進化しているのならば、それは与えられた(押し付けられた)ものではなくなるはずだ。


このコラムは、2019年10月23日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第892号に掲載した記事に加筆しました。

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