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製品の質を高める

 工業製品と言うのは、全ての製品が同じ品質になる様にモノ造りをする。
一方、工芸製品は職人のクラフトマンシップに依存し、世界無二の製品を造る。
一般的に、工芸製品は嗜好生が高く、工業製品より高価な価格となる。

例えばセイコーは、1964年にクオーツ時計を小型化し、東京オリンピックの競技用に使える様にした。小型化と言っても、壁掛け時計ほどの大きさだ。しかし当時としては、画期的な小型化だ。その後も製品改良を進め、正確無比な時を刻む腕時計が、庶民でも買える様になった。こういう物が工業製品だ。

一方スイスの時計メーカは、機械部品の組み合わせで正確な時を刻む機械式時計を造り続けた。こういう製品を工芸製品と呼ぶことにする。職人が一つずつ手造りをする。量産は出来ない。従って希少価値が有り、高級品として販売され、少数のマニアマーケットにおいて高額で売れる。

工業製品は、機能と品質がどんどん上がり、価格は下がる。
工芸製品は、高い「質」が一部のマニアに支持され、価格は下がらない。
工業製品と工芸製品は、こういう関係に有る。

この違いは「品質」と「質」に有ると考えている。
「品質」も「質」も英語に直せばQualityだ。
その違いは「品」にある。品質とはQualityの和訳であるが、「品」が付く事により、物の質という印象を与える。不良が少ない、寿命が長いなど物そのものの質を表すことになる。

一方「質」の方は「品」が付いておらず、物から離れた質を表す。
つまり物よりは、顧客(使用者)の価値感にフォーカスした言葉と定義している。これは私の勝手な定義であり、一般的ではないかもしれないが、このコラムではそう考えて読んでいただきたい。

メーカーズマークと言うバーボンウィスキーは、ボトルキャップを1本ずつ手作業で封蝋している。当然手作業なので、コストがかかる、1本ずつ形が違う。工業製品としては、品質が統一されてないことになる。しかし封蝋の形で、封蝋作業者の名前を当てるマニアがいると言う。つまりこのマニア達にとっては「封蝋の形が違う」と言う事が価値につながる。本来ウィスキーは工業製品だが、工芸製品的要素を付加することにより、独自の「質」を持たせることになる。こういう部分は、コスト削減してはいけない。むしろコストをかけるべきなのだ。

玩具も同様だ。プラスチック成型で造り、印刷で色付けされた人形は工業製品。同じプラスチック成型で造っても、職人がぼかし塗装をする、筆で一体ごとに色入れをすると、マニア向けのフィギュアとなり、上市価格が倍となる。

この様に嗜好性の高い商品の場合は、顧客の価値感にコストをかける事により価格が上がる。

こういう議論は、部品を生産している工場には無関係だろうか?
ここで「嗜好性」を「利便性」に置き換えてみたらどうだろう。
製品の品質が高い事は当たり前。それに「利便性」と言う質を追加する。
部品を生産し、顧客に供給する業者ではなく、部品を生産供給することにより、顧客の生産を支える業者と言う立ち位置をとる。

この様なポジションを取ることができれば、あなたの工場は、顧客にとって代替え不可能なパートナーと位置づけられるはずだ。顧客の生産支援パートナーとて、どんな質を提供出来るのか考えてみる価値があると思うが、いかがだろうか?


このコラムは、2014年9月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第381号に掲載した記事に加筆しました。

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