製造業にとって「無駄」とは価値を生まない時間、作業、モノであり、根絶対象だ。サイクルタイムの不均衡により生じる待ち時間、作業中の不要な動作、製品の機能に貢献していない部品などは削減するに限る。この時の判断基準は顧客基準でなければならない。待ち時間や不要な作業動作を考える時に、顧客基準で考える必要性はあまり思い浮かばないかもしれない。しかし自分たちにとっての無駄が、顧客にとって価値となる場合がありうる。
先日カンブリア宮殿で「クリーニング店・東田ドライ」を紹介していた。
三代目が事業を引き継いだら赤字と判明。ファストファッションの浸透や、家庭用洗濯機の高機能化等で、クリーニングを利用する客は年々減り続ける。閉店に追い込まれる店も少なくない。業界全体が斜陽産業化している。その中で東田ドライは、宅配クリーニングで急成長を遂げた。クリーニング+宅配という新しい業態だけで成長したわけではないと私は思う。
クリーニング+宅配という新しいビジネスモデルだけでは、同じ業態の競合が参入すればすぐにシェアの奪い合いになる。東田ドライにあった参入障壁は「おせっかい」だ。
預かった洗濯物のシミを落とす。ボタンを付け直す。ほつれを繕う。その様な作業をしても料金は上がらない。経営的に見れば、無駄な作業だ。しかしこの判断基準は自己基準であり、顧客基準ではない。顧客基準で見れば、他社にない付加価値を生む作業となる。
二代目経営者はこれらの技術を実直に磨き、三代目経営者がその価値に気が付きセールスポイントとした。クリーニング+宅配というビジネスモデルと「おせっかい」で黒字化し、さらに事業拡大を続けているのだ。
我々製造業にとって、気が付いていない付加価値を顧客基準で見つけるのは難しいかもしれない。しかし
部品の生産、材料の加工をしている工場は「顧客の生産を支えるサービス業」市場ユーザに製品を生産している工場は「顧客の生活を支えるサービス業」という視点に立てば、顧客基準で無駄と付加価値を見分ける事ができるだろう。
このコラムは、2018年6月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第681号に掲載した記事です。
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