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AIは製造現場を救うか?

製鉄所、AIの導入進む 設備の老朽化・団塊世代の退職 トラブル防ぐ熟練者のノウハウ、継承

 鉄鋼大手が、製鉄所での操業トラブルに悩んでいる。「鉄は国家なり」と称された高度経済成長期につくった設備の老朽化に加え、団塊世代のベテラン技術者の退職が相次いでいるためだ。現場でのトラブルを未然に防ぐノウハウをどう継承していくか。解決策として期待されるのがAI(人工知能)の導入だ。

全文

(朝日新聞ディジタルより)

 中国の製鉄業が国策の後押しで勢いづいているらしい。

一方日本の製鉄業界は操業トラブルに悩んでいるという。
国内最大手の日本製鉄は18年度、大分や和歌山の製鉄所でトラブルが相次ぎ、想定より約100万トン(約2%)の減産を強いられた。
国内2位のJFEスチールは18年度、国内3地区の製鉄所にある高炉の操業トラブルで当初の想定より約180万トン(約6%)の減産となり、追加の対策費として約100億円をあてた。

このような状況を打破するために、鉄鋼各社はAIの導入を進めていると朝日新聞は報道している。

日本製鉄は、効率的な生産計画づくりにAIの活用を検討している。顧客ごとの出荷形状に合わせ、かつ母材の無駄なく生産計画を立てられるようにする。
JFEは工場内のセンサーで検知した鉄鋼の温度や成分などをAIが分析し、製造中の鉄鋼製品に異常がないかを分析し品質を保証する。

これらの作業は現場の生産計画担当者や保守担当者の技能できちんとこなせていたはずだ。そうでなければAIに彼らの技能を落とし込めないはずだ。

社内に蓄積された技能や知見をAIに落とし込むことになんら異議はない。
しかしそれでよいのか?という気持ちを拭い去れない。

社内に蓄積された技能は暗黙知として代々伝わってきたはずだ。それは先輩が築き上げた暗黙知の上に、自分たちの知恵を代々積み上げてきたもののはずだ。AIに教えられて作業する職員はAIに言われた通りに作業をする。彼らに
先輩がやってきたように、先輩の暗黙知の上にさらに工夫や改善を積み上げることができるのだろうか?

機械に指示された通りに働く人間はいかにして創造力を磨くのだろうか。AIは好ましくない事例を発見すれば、ディープラーニングでアルゴリズムを修正することができるはずだ。しかしAIは「無」からは創造できない。

人間が創造力を放棄したら、進化はそこで停止するのではなかろうか。


このコラムは、2019年9月9日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第873号に掲載した記事です。

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東大でシンドラー製エレベーター事故 学生1人けが

 国土交通省によると、千葉県柏市の東大柏キャンパスの総合研究棟(地下1階地上6階建て)で11日午後、シンドラーエレベータ社製のエレベーター(定員19人)が扉が開いたまま、1階から地下1階方向に下降した。かごを脱出しようとした男子学生1人がひざを打撲して軽いけがをした。同省が16日発表した。

 同省の調べでは、1階から18人が乗り込んで上昇するはずだったが、いきなり下降を始めた。あわてた学生が1階フロア側に脱出しようとした際、かごが下がって生じた段差に足を引っかけ、けがをしたとみられる。事故機は保守点検もシンドラー社が請け負っていたが、原因は不明という。同省はシンドラー社に対し、同型のエレベーターでブレーキに異常がないか点検するよう指示した。

(asahi.comより)

 Wikipediaによると,シンドラー社のエレベータは,扉が開いたまま上昇または下降,乗客の閉じ込めなどの事故が多いようだ.大阪府の西成警察署では,署内に2基あるエレベータのうち1基が,無人のまま最上階の7階まで上昇し,天井に衝突して停止すると言う事故が起きている.

国土交通省はブレーキの異常を点検するように指示をしているが,2007年に東京都港区が実施したシンドラー社エレベーターの電磁ノイズ耐性調査によると,電磁ノイズ耐性が低いことが分かっている.

今回の事故も,制御回路がノイズにより誤動作したのではないだろうか.
エレベータの構造を考えると,携帯電話から発する高周波電磁ノイズよりは,エレベータ自身に内蔵している,リレーやソレノイドから発生するバーストノイズ(低周波電磁ノイズ)の方が,影響を与えやすいと思われる.

このようなノイズによる誤動作は,電機・電子製品業界では既に30年ほど前にメカニズムを解明し,対策も確立したと考えていた.このメーカでは,これらの技術がエンジニアの世代を超えて伝承できなかったのではないだろうか.

ノイズ対策技術などは,世間から注目を浴びるものではない.ノイズによる誤動作を止めたとしても,それで当たり前のレベルになるだけだ.このようなあまり報われない技術がきちんと社内に蓄積され,世代を超えて
伝承されなければ,10年,20年のスパンで同じような不具合が繰り返し発生することになる.


このコラムは、2010年8月に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第180号に掲載した記事を修正加筆したものです。

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