会社員時代の最後の職位は、品質保証部長だった。実は子供の頃から設計の仕事がしたくて電子工学を勉強し、就職をした。品質管理、品質保証の仕事をするぐらいならば、会社を辞して転職しようと考えていた。
しかしある日突然、担当役員の前で事業部長が「明日から林に品質保証部を担当させます」と宣言。何も聞かされていなかったので我が耳を疑った(笑)社内ベンチャーのような小事業部で、ちょっと変わった製品の開発をしていた。その製品が工程内で不良となり、役員に報告が遅れた為大目玉を食らっている最中の事業部長発言だった。
志通り会社を辞めようかとも思ったが、住宅ローンを抱え、守らねばならない家族もあったので、唯々諾々と事業部長の突然の辞令に従うことになった。しかしやってみると、品質保証の仕事が面白い。自分の天職とすら思える。転職せずに天職を得た(笑)
品質保証部門を任され部門のスローガンを「戦う品証」とした。
部外の同僚は「品質クレームを言ってくる顧客と戦う」と考えていたようだ。しかしそうではない。「守り」に対する「攻め」なのだ。
問題が起きてから火消しをするのが「守り」であるとすれば、問題が起きる前に手を打つのが「攻め」だ。守りの戦いではなく、攻めの戦いをしようという発想で「戦う品証」と言う看板を掲げた。
設計や製造の失敗事例から未然防止を考える、と言う発想を事業部内に定着させた。
設計技術者だった頃から、周辺装置を担当しOEMメーカの工場に出入りをし、不具合の再発防止対策をすることが多かった。その経験で信頼性技術が磨かれた。もし自分が一流の回路設計者であれば、周辺装置の仕事は回ってこなかった。
二流の回路設計能力、突然の辞令という不幸、不運があるから天職を得て今の仕事につながっている。
「失敗から学ぶ」と言うより「不運をチャンスに転じる」と言うことだろうか。
このコラムは、2018年5月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第667号に掲載した記事に修正・追記しました。
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