格言NO.74:報告書を捨てよ、現場に出よう。
昔,寺山修司が「書を捨てよ,街に出よう」と言う本を書いた.
若い頃,この本を読んだ.横尾忠則の装丁を見ると当時が懐かしい.
今は,会議室やオフィスで報告書ばかり読んでいる幹部職員に,こう言いたい
「報告書を捨てよ,現場に出よう」
毎週追加している改善格言は先週で74個目となった.
先週の格言に対し読者様からメッセージをいただいた.
※N様のメッセージ
お久しぶりです。
格言の「報告書を捨てよ,現場に出よう」本当にそう思います。
机の前ばかりに居て、現場に出ない人が多い。
現場経験者が少なくなっているので、
どう現場で何したらいのか?何を指示したらいいのか?
分からないんでしょう。最近は、メールで報告書をばらまくので、
PCも捨てた方がいいかもしれません。。
先週の格言は,今イチしっくり来ていなかった.内容ではなく語呂が悪い.寺山修司の「書を捨てよ,街に出よう」に比べると,しゃきっとした語感がない.
N様のメッセージに返事を書いていて,思いついた.
「椅子を捨てよ,現場に出よう」に変えようと思う.
実はこの格言は,キャノン電子の酒巻氏の書名からパクったものだ.
「椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる! 」著者:酒巻 久
元々アイディアと言うのは,今あるものの組み合わせでしかない事が多々ある.寺山修司と酒巻久志と言う「斬新な」組み合わせを思いついた時点で,大いに新鮮な格言となっていると,勝手に解釈している(笑)
丸パクリではないし,コラージュ,パロディと言う表現手段もある.
ところで,酒巻氏とはかなり違うやり方だが,私も「着席従業員」の椅子を捨てたことがある.
以前指導していた台湾資本の中国工場には,品質工程師と呼ばれる職員が数人いた.品質工程師の仕事は,客先クレームに対する対策報告書を作成する事だ.この人たちは,大した作家先生たちであり,日がな自分のデスクに座り,PCに文章を打ち込んでいる.
彼らは,顧客から不良として返却された製品の不良分析が出来る訳ではない.不良分析は,専門の分析屋がいて彼らが書いた報告書を読んで,英語に翻訳した上で客先提出報告書に転記する.従って不良現品を手にする事はない.
現物も見ないで,不良解析を書き,現場も見ないで再発防止対策を書く.全部机の上で書き上げる「作文」なのだ.
彼らの存在意義は,海外顧客の為に英文で報告書が書ける事だ.
従って彼らが書く再発防止対策は,「作業員に再教育をした」などと言う,効果を実感出来ないものばかりだ.
そういう彼らを見るたびに,現場に行けと尻を蹴飛ばしていた.
そして毎朝開催していた品質会議(前日工程内で発生した不良の原因分析と,再発防止をレビューする会議)に全員参加させた.最終的には,彼らをオフィスから追い出して,生産現場に机を移動させた.
勿論これだけで,彼らが不良分析出来る様になったり,再発防止対策を考える事が出来る様になった訳ではない.しかし彼らが書く客先提出報告書のレベルは格段に上がった.
もしあなたの仕入れ先からの不具合再発防止対策報告書に,不良原因は「人為ミス」対策は「作業員の再教育」などと書かれていたら,仕入れ先を訪問し,報告書をどのようにして書いているのか確認した方が良かろう.
蛇足ながら,当時オーナ経営者は私の為にオフィスに応接セットを用意してくれていた.私はその豪華応接セットを即捨てた(笑)代わりに立ち飲みバーで使う様なテーブルを用意してもらった.私の部屋での会議は立ったまま行っていた.
このコラムは、2013年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第303号に掲載した記事に加筆したものです。
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