経営者の仕事を一言で言えば「決断」だろう。
組織の中で最終決断が出来る人が、経営者であり、毎回正しい決断をする人が、優秀な経営者だ。
先日読んだ本に、決断を誤るパターンが紹介されていた。
参考になりそうなので、ご紹介したい。
- 二者択一をする誤り
決断とは二者択一ではない。
例えば新型の設備を購入する、しない。と言う決断は二者択一の様に見えるが、「購入する、しない」と言う問いの立て方が間違っている。
新型設備を購入する・しないは、生産能力を上げる(又は生産効率を上げる)ための手段に過ぎない。新型設備を購入する以外にも、方法があるはずだ。はじめから二者択一問題に落とし込んでしまうと、別の方法は絶対に考えつかない。 - バイアスがかかった確認をする
当然だが現状把握が間違っていれば、正しい決断は出来ない。
厄介なのは、バイアスがかかった見方をしていると、間違っていても正しいと思い込んでしまう事だ。バイアスにとは、思い込みと言ったら良かろう。ネガティブ・ポジティブ両方がある。初めから先入観を持って見ているので、現実を間違って把握する。
思い込みとか先入観が何処から生まれるかと言うと、自分自身の体験、常識と言われている事だ。厄介な事にこの壁は意外と厚い。
例えば「生産効率を挙げるにはまとめて作れば良い」と言うのがある業界では常識となっている。これは常識ではなく、段取り替え時間を短縮出来ないという制約による、妥協である。 - 短期的感情で決定する
動物は、目の前にある恐怖や脅威を避ける様に行動する。これは生存本能であり、人間も同様だ。恐怖、脅威、不快と言う感情で決断をすると、間違ってしまう事が多い。まずは、自分も相手も感情で行動している事を理解する。
世の中そのものが、大衆の感情で動いている事が分かれば、世の中を動かすメカニズムが見えて来る。 - 過信で判断する
自信は必要だが、過信は危険だ。
過信とはどういう時に発生するかを考えてみると良い。
少ない情報だけで判断する。
少ない経験だけで判断する.
得てして過信に陥り易い人は、人の話を聞かない。
正しい決断をするためには、以上の4つに陥らない様にすれば良いはずだ。
私の対処方法を列記しておこう。
- 二者択一の前に別の質問をする。
例えば「新しい設備を買う・買わない」と言う二者択一の設問の前に、設備を買わない場合は何が出来るかを考える。 - 常識を疑う。
社内の常識、業界の常識を疑う。
これは意外と難しいと思う。何せ自分の頭に刷り込まれてしまっている事を疑えと言っている。業界外の人とディスカッションする事が有効。 - 異業種を沢山見る。
表面的に見ていては、分からないと思うが、深く見れば常識の違いに気が付く。 - 自分の立ち位置を変える。
立っている場所の高さ、時間軸を変えるという意味だ。
虫の目と鳥の目(視野の広狭)を持てば、物事を仔細に見たり俯瞰する事が自在に出来る。明日死んでしまうと考え行動し、100歳まで働くと考えて準備をすれば、永い時間軸で判断出来る様になる。 - 人の話を聞く。
顧客の話を聞くのは当たり前だが、部下、同業者、異業種、コンサルなど色々な人の話を聞く事。ただ表面的に聞くだけではなく、好奇心を持って聞く。
私はこの五点に気をつけて、日々を送っている。
参考図書:決定力! ――正しく選択するための4つのステップ:Chip Heath,Dan Heath(著)
このコラムは、2013年9月2日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第325号に掲載した記事です。
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