3月12日付けの朝日新聞に原真人論説委員が、有効求人倍率の上昇に対して「生産年齢人口が480万人減少しているのだから有効求人倍率が上昇しているのであり、アベノミクス効果ではない」という記事を書いていた。
たとえば有効求人倍率が代表的である。倍率がバブル期超えの高さとなったことを、首相は「アベノミクスの成果」と誇ってきた。それが何度も繰り返されるうちに、国民の意識に「アベノミクスは成功」とすり込まれていく。
首相の説明には直近6年間で生産年齢人口(15~64歳)が480万人減ったという事実は、いっさい出てこない。それこそ雇用統計が好転している主因なのに、である。”
(全文)
(朝日新聞「波聞風問」)より
有効求人倍率の上昇が景気回復の効果であるという政府見解に対して、統計データを元に反論を展開した記事だ。
分母になる生産年齢人口が減っているのだから、分子の求人数が変わらなくとも、その答えである有効求人倍率は上昇するというわけだ。多くの人がもっともな意見だと感じたのではなかろうか?
世論と違った視点を提供するのは、ジャーナリストの姿勢として間違ったものではないだろう。しかし正しく統計データを見なければ、間違った世論を導くことになる。
有効求人倍率の分母は生産年齢人口ではなく、有効求職者数だ。
したがって有効求人倍率は(有効求人数)÷(有効求職者数)であり、有効求人数が増加すれば求人倍率は大きくなる。当然有効求職者数が減少しても求人倍率は大きくなる。景気が悪く諦めてしまった人たちが求職活動を止めてしまったのなら別だが、働き口が見つかって求職活動をする人が減っていると解釈する方が正しそうだ。
恣意的に統計データを使えば、判断を誤ることになる。
経済記者である原真人論説委員が有効求人倍率の定義を知らなかったとは思えないのだが。
世の中にはこの手の「ウソ」が結構見られる。
相関関係があるだけなのに、それをあたかも因果関係のように見せかける。
例えばバスケット選手は背が高い、というのは相関関係があるだけで、因果関係があるわけではない。このウソは簡単にみやぶれる。
「背が高い人がバスケットをやる」
「バスケットをやると背が高くなる」
文章をひっくり返すとすぐにわかる。
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このコラムは、2019年4月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第804号に掲載した記事に加筆しました。
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