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人間と設備の調和

 「人偏の付いた自働化」の定義は、不良が発生したら直ちに停止する、と言うことだ。その昔、豊田佐吉が、糸が切れたり、なくなったときに直ちに停止する自動織機を発明した。これが「人偏の付いた自働機」の始まりと言われている。

この発明以前の自動織機は、常に作業員が生産機械を監視していなければならなかった。さもなくば、糸が切れたまま自動織機は不良の布を生産し続けてしまう。

「作業員が機械を監視する」と書いたが、見方によっては、わがままな機械に作業員が奉仕しているようにも見える。機械の都合で働く作業者は、機械の「奴隷」と同じだ

糸が切れたら自動的につなぐ、糸がなくなったら新しいボビンを自動的に装填する。こんな自動機が出来たら、作業員の負担は減るだろう。しかし「人偏の付いた自働化」は、人と機械の作業分担に調和を持たせることに焦点を当てる。

「人偏の付いた自働化」とは、調和を基にした作業員の奴隷解放運動だ。

設備は予め仕様で決められた以上の生産はできない。しかし人は、工夫次第で自ら能力の向上が出来る。設備産業と言えど、人が主、設備が従でなければならない。

設備を最速で動かすことばかりに、着目し、作業員を多く投入する。
設備のスピードに合わせるために、事前に準備作業をまとめてやっておく。

このような生産方式は、冷静に考えればムダだ。

1時間に100個生産可能な設備の前工程が80個/時間/人の能力しかない場合、もう一人前工程に投入する。これでは、50個/時間/人の生産効率しかない。
設備のスピードを80個/時間に落とせば、80個/時間/人の生産効率になる。
更に、前工程の作業改善をして100個/時間/人だけ造れるようにするの改善だ。

事前準備をまとめ作業すると、その間設備は空運転となる。空運転となれば、後工程は全て手待ち状態になってしまう。

こう書くと誰でもが当たり前だと納得するだろう。
しかし目の前の設備を止めてはいけないと、必死に作業している作業員や班長には見えないことがある。

指導者は理解できていても、現場ではこのようなムダに気が付いていないことがしばしばある。
指導者は、班長・作業員に人間と設備の調和を納得させ、人を減らす、設備のスピードを落とす勇気を与えなければいけない。


このコラムは、2011年12月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第234号に掲載した記事です。

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自働化

 「自働化」の定義を調べてみると

「自働化」とは、不良が発生した際に機械が自動的に停止し、後の工程へ良品のみを送るようにすること、公式ページでは通常の加工が完了したら機械を安全に停止させることも指すとしている。 豊田佐吉が発明した自動織機に、稼動中に糸が切れた際に自動で停止する装置が組み込まれていたことに由来している。

(Wikipediaより)

となっている.しかし今時の自動機で不良が発生してもそのまま生産し続けるようなものはなかろう.同じくWikipediaに以下の記述も見られる.

  • 合理化を進めるあまりに従業員の人間性やインセンティブ(労働意欲)を無視してはならない。
  • 人が関わらない自動化をしてしまうと、機械へカイゼンの知恵を織り込めなくなることから、カイゼンを持続的に行うためにも人が関わる自働化が重要となってくる。

こちらの定義の方が,現在の実情を表しているだろう.

すなわち人が機械に使われるのではなく,人が機械を使いこなして品質や生産性を向上する.例えば自動機が生産しているのを人が監視している.というのも人が機械の番人に成り下がってしまっている.更に見張っている間は「手待ちの無駄」であり,人の能力が発揮されていない.これでは労働意欲もわかないであろう.

また完全自動設備の導入には大きな設備投資が必要であり,細かな改善にはその都度設備の改造が必要となり,コストパフォーマンスの検討が必要となる.このような状況では,現場の改善意欲がそがれてしまう.

例えば完全自動の立派な設備を導入してしまうと,工程変更による改善を試そうにも大変な労力を必要とする.工程を分割して…などということは不可能だ.

人と設備が調和を持って生産を行う.現場の工夫を常に反映できる設備とする.
こういう考え方を「自働化」と呼びたい.

昨今の労務費の高騰,作業者の雇用難から自働化による省人化をしなければ生き残れない.また人のばらつきを抑え高品質化にも自働化が効果的である.

私はお客様の工場で次のような手順で自働化を提案している.

  1. 現在の生産ラインの流れを可視化し,徹底的にムダを排除する.
    これを省略してしまうとムダも一緒に機械化してしまう可能性がある.
  2. 自働化を意識した小型かつ安価な設備を導入する.
    小型というイメージは作業台に乗る大きさというレベルである.
    価格も省人化効果対費用を考える.中国であれば作業員1名省人化に対し設備投資は30万円以下である.
  3. 設備を導入した後,更に改善を続ける.
    設備が小型であるのでレイアウト変更は簡単.設備の小改造も簡単に出来る.

一方高価な設備を導入してしまうと,設備を止めるのが悪だという観念にとらわれ目一杯に生産をしてしまう(作りすぎの無駄).または機械を止めないために余分な準備作業を入れ込むという無駄が発生する.

以前改善した事例を紹介しよう.
設備の能力(800個/時間)を最大限に引き出すために,前準備に2人の作業者を置いていた.それでも後工程の能力(1000個/時間)には追いつかない.
それを前準備と設備作業を一人作業化した.設備の能力一杯には生産できないが500個/時間は余裕を持って生産できる.もう一台同じ設備を導入すれば後工程の能力(1000個/時間)を十分まかなえる.
これで3人を2人に省人化し更に時間当たりの生産能力を200個改善したことになる.

こういう事が出来るのが自働化である.
あなたの工場ではどんな自働化の工夫をしておられるだろうか?


このコラムは、2008年4月21日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第30号に掲載した記事に加筆しました。

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