お酒の過度な安売りを規制する改正酒税法などが1日施行され、ビールや発泡酒の値上げが相次いでいる。ねらいは街の小規模な酒屋さんを守ることだが、一気に2割の値上げに踏み切る店もある一方、違法な安売りの基準があいまいで、戸惑いの声も広がる。
(以下略)
(朝日新聞電子版より)
このニュースのどこが失敗なのか?と言う疑問をもたれる方もあるだろう。確かに失敗とは言い切れない。しかし過去から弱者保護の名目で行って来た政策は、うまくいっていない。むしろ弱者をより弱者にしてしまっていると言った方が適切ではなかろうか?
例えば農業。日本程美味い米を普通に生産出来る国は他にはないだろう。農協により農家の経営努力を奪い、日本の農家が世界市場に目を向けるのを妨げていたのではなかろうか。近年、志の高い農業経営者が様々な方法で結果を出している。
町の小さな酒屋さんの経営が難しいのは、想像にかたくはない。資本力,販売力が有る安売り酒販店、スーパーマーケットなど競争相手がどんどん増える。更に異業種のネット通販が参入して来る。この様な経営環境の変化に対応して行くのが「経営」でありそれを放棄してしまっては、成長はあり得ない。
人が物を買う時の判断基準は「価格」だけだろうか?
「あなたから買いたい」と言われる酒屋を目指したらどうだろう。新聞記事には、80代の女性が6缶パックのビールを毎週3回買うと有った。ひとパック2kg以上あるはずだ。他の食材も合わせれば、老齢の婦人には相当の負担になるだろう。毎晩冷えた缶ビールを3缶ずつ届けたらどうだろう。ひょっとすると、本当は瓶ビールを飲みたいのに、重いので缶ビールで我慢しているのかも知れない。酒屋ならこの欲求を満たす事が出来る。
「ご用聞き」と言う昔からの習慣は、顧客の要求をより深く理解するためのシステムだ。コンビニのPOSから集めたビッグデータよりも、対面で聞き取る顧客要求の方がより即効性があるはずだ。その上ビッグデータでは不可能だが、顧客との関係性を深める事が出来る。
最近問題になっている宅配便の再配達問題も、町の酒屋さんが配達を受託する事で、緩和出来る可能性がある。発送品の受付代行は以前からやっている。中元,歳暮の季節に進物として酒類を送る人が多いからだろう。受付代行だけではなく、配達も代行する。酒屋さんが配達のついでに、宅配便も配る。宅配便配達時にご用聞きのチャンスがあるはずだ。
今回の規制で、消費者物価指数を僅かに上げる効果はあると思うが、本当に町の酒屋さんの経営が楽になるだろうか?重要な事は町の酒屋さん自身が経営改善のために工夫を凝らす事だろう。
このコラムは、2017年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第531号に掲載した記事です。
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