出航可否、基準は 法に基づく規程、業者作成「縛りにならず」
知床・観光船事故
北海道斜里町の知床半島沖で消息を絶った観光船「KAZU1(カズワン)」荒天が予想され、漁船も出航を控えるなかで、乗員・乗客26人を乗せて港を出た。出航の判断や安全確保にはどのようなルールがあるのか。
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出航できるかどうかの基準は、各事業者が海上運送法に基づいて作成する「安全管理規程」で定めている。この規程は、安全確保のためのルールを事業者自身が決め、国土交通省に届け出るものだ。違反すれば罰金刑などの罰則がある。
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こうした取り決めについて、船会社に法律的なアドバイスをする海事代理士の春山勝さんは「あってないような基準」と指摘する。規程を作成する際の実態として、「台風などで絶対に運航できないぐらいの基準をつくり、縛りにならないようにすることが多い」と内情を明かす。
福井県の東尋坊観光遊覧船は、岩場が多いため、海から陸に向かう風の風速が10メートル以上、それ以外は13メートル以上なら出航しないと定めている。波の高さ0.8メートル以上、視程300メートル以下でも運航をやめる。
(朝日新聞より)
事故発生後、海底に沈む観光船は発見できたが、人命の救助は絶望的な状況だ。
板子一枚下は地獄、という格言があるが海上での事故には大きな犠牲が伴う事が多いだろう。航空機の場合も同様だが、運行基準や事故原因の調査が格段に違う。航空機は自動車より安全だ。
船舶の事故を調べてみると、2012年から2021年の十年間で遊漁船の死傷事故は7件あった。他船の走行波によるもの、乗船者の不注意による転落が原因であり天候による事故はない。
カズワンの事故は、天候に対する判断ミスと考えるべきだろう。法による縛りがなければ何をしてもいいというわけではない。どんな事業も最優先は安全だ。司法がどう判断するのかはわからないが、このような姿勢の企業は世間が許さないだろう。
このコラムは、2022年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1291号に掲載した記事です。
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