伝える技術


 今年も明治大学の経営学部の皆さんに講義をして来た。学生さんたちのレポートを採点していて愕然とした(笑)
私が伝えたかった事を理解出来た人が少なく感じられたからだ。

レポートの採点結果を、送り返す時に「伝える能力に自信をなくした」と愚痴を書いた。助手の方から「それは学生のせいです」と言う返事をいただいた。
多分落ち込んでいる私を、慰めてくださったのだと思う。しかしそれを読んで、我に返った。愚痴など言っている場合ではない、もっと自分の伝える技術を磨かねばと反省した。

問題の原因を他人に求めれば、愚痴が出て解決出来ない。己の成長はない。
問題の原因を自己に求めれば、対策が出て解決出来る。これが成長だ。

実務経験のバックボーンが全く違う。年齢的ギャップが大きい。これらを克服する方法を見つけることができれば、大いに自己成長出来るはずだと考えた。
中国で指導している若者達の事を考えてみた。実務経験のバックボーンは違う、年齢ギャップはある、更に言語の壁が有る。

ではなぜ、日本人の学生さんに私の考えを伝えられなかったのか?
自己分析してみると、同じ日本語で話し合える事が問題だったのかも知れない、と思い至った。言葉が通じることにより、バックボーンや年齢のギャップに対する配慮が足りていなかった。

中国の生産現場で仕事をしていると、中国語でのコミュニケーションが完璧ではないと言うハンデが有るため、伝わる様に工夫する、伝わったか確認すると言うコトをしている。日本語が通じる相手だと、この様な努力を怠っているのだろう。

以前、日系企業の日本人総経理が、自分の考えを通訳が50%理解し、通訳から中国人従業員に伝わる時にまた50%しか伝わらない、とおっしゃっていた。
そうすると、経営者としての自分の考えは従業員に25%しか伝わらない。
この様な絶望的な状況を嘆いても始まらない。伝える努力が必要だ。

中国でも日本でも経営者と従業員にはギャップが有る。

  • 経験のギャップ:経験の違いで、自分には見えても部下には見えない事が有る。
  • 年齢のギャップ:年齢のギャップは経験のギャップとなる。
     年代が違えば、受けた教育も育った時代も違う。
  • 立場の違いによるギャップ:経営者と従業員の立場が違えば、モノの見方や考え方が変わる。

これらのギャップを考えると「異文化」とは同じ国の中でも発生するモノだ。

中国ではこれに加えて、言葉のギャップ、育った環境のギャップなどホンモノの異文化が加わる。

「違う事」を前提にコミュニケーションする。
それは違いを理解するとともに、同じ所に着目する事が重要だと考えている。