社員第一主義


 「日本でいちばん大切にしたい会社」と言う本を書かれた法政大学大学院の坂本光司教授は、書籍の中でこうおっしゃっている。

「私は、数多くの中小企業を訪ね歩く中、好況、不況に関係なく、常に高い利益率を出し続けている企業があることに気付きました。それは、経営者が「社員第一主義」を貫いている企業だったのです。」

坂本教授の「日本でいちばん大切にしたい会社」は既にシリーズ4冊目を数えている。私もこの書籍で、日本理化学工業、伊那食品などのすばらしい経営者を知ることができた。

「日本でいちばん大切にしたい会社4」坂本光司著

従来の経営学では「企業は利益を追求するのが目的であり、その結果従業員を幸福にしたり、社会に貢献する事が出来る」と言うのが常識だった。

しかし「企業の目的は従業員を幸せにする事が目的であり、その結果社会貢献が出来る様になり、企業に利益をもたらす」と目的と結果を入れ替えて考える方が、上手く行くはずだと考えた。2010年12月、明治大学経営学部の郝教授と議論をして「二十一世紀型企業経営」と言う啓示を得た。

つまり、従来型の企業経営は、企業の業績を上げるために人財の育成をする。
しかし、先進的な企業経営は、人財の育成を目的とし結果として業績が上がる。
と言う議論を遠して「二十一世紀型企業経営」と言う言葉が出て来た。

従来は、経営者と労働者は利益対立関係に有り、利益の配分を巡って対立することになる。激しい労働争議などが発生し、自らの利益を主張して譲らない。そこには、顧客の存在が忘れ去られていたと言って良かろう。

その後「顧客第一主義」を経営理念としてうたい、経営者と労働者は顧客満足を共通の目的として協調する、と言う考え方になる。経営者は、顧客満足を高めるための一手段として、人財育成をする。その結果が業績に反映する。

坂本教授の「社員第一主義」は、まず従業員を幸せにすることを目的とする。
上述の例で説明すれば、従業員を幸せにするために人財育成をする。その結果顧客満足が得られ、顧客が幸せになる。幸せな顧客は企業の利益に貢献する。と因果関係が逆転する。

企業が大切にしなければならないのは、
一、従業員とその家族。
二、取引先の従業員とその家族。
三、現在顧客と未来顧客。
四、地域社会。
五、株主、出資者、経営者。

こういう考え方が広まると、社会全体が幸せになるはずだ。

坂本教授の書籍は中国語に翻訳されている。『日本最了不起的公司』で検索すると中国語翻訳版が多数出て来る。ご参考にしていただきたい。


このコラムは、2014年10月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第395号に掲載した記事に加筆修正したものです。

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