米国のシカゴ国際空港で9日、米ユナイテッド航空が自社の便に職員を乗せるため、すでに搭乗していた乗客を機内から引きずり下ろす映像が交流サイトで拡散し、同社への強い批判が起きている。ミュノス最高経営責任者は「全職員にとって心が乱れる出来事。何が起きたのか詳細に調査を行う」との声明を出した。
(以下略)
ユナイテッド航空(以下UA)は自社の社員4名を乗せるため、既に搭乗している乗客から4名翌日の便に変更を依頼。誰も降機しないので、4名指名して降ろしたと言う。指名された4名は全てアジア系の乗客だったそうだ。内1名は翌日の予定があると言って拒否。警察官を動員し引き摺り下ろした。
私も動画映像を見たが、犯罪者を扱う様な態度だった。顧客に対する行動とは思えない。
この報道を見て思い出した事件がある。
カントリーソング歌手が、ギターを手荷物運搬職員の手扱いで壊された事件もUAだった。当時ギターの弁償を求めて9ヶ月もUAと交渉したがらちがあかず、被害者のデーブ・キャロル氏はその顛末を“United breaks guiter”という歌にしてYoutubeに上げた。その結果UAは自らの非を認め、賠償に応じた。
更に私の記憶によると、デーブ・キャロル氏の動画は、UA社内で社員研修用の資料として活用されていると聞いた。今回のニュースを見て私の記憶違いであった様だ。他の航空会社がUAの事例を社内研修に活かしているのだろう。
UAは自らの不適合事案から学ぶ事もなく、また同様な問題を引き起こしている。いくら経営者が反省していても、現場の職員が理解していなければ意味がない。現場で起きている事を、いちいち経営者や幹部が判断する事は不可能だ。現場にいる職員が判断せざるを得ない。
航空会社は、飛行機を飛ばす事が仕事ではない。顧客や荷物を安全快適に目的地に届ける事が仕事だ。そんな簡単な事がなぜ分からないのか。現場の職員達にとって、所属している組織に「安全感」を感じられないのだろう。「組織に対する安全感」とは仕事を執行していく上で、「権限を委譲され、守られている」と言う実感をのことだ。
同じく米国の空港で、後部座席からの搭乗案内に従わない乗客に対し、まるで犯罪者に対する様な扱いをした職員がいたそうだ。見かねて「なぜ人を家畜のように扱うんだい?もう少し人間らしく扱えないものかな?」と注意すると、職員は「でも規則通りにやらないと、問題になってこっちがクビになりかねません」と答えたそうだ。この職員は、組織から信頼されていないと感じており、自分も組織を信頼する事が出来ない状態になっている。
自分の仕事の目的を理解せず,「自社社員を乗せるために客を降ろせ」という上司の指示の方が優先順位が上がり、上司の指示に従わなければ、職を失う。この様な職場に「安全感」はない。その結果、現場職員は「恐怖」に支配され仕事をし、本来企業が目的とする仕事をする事が出来ない。そして顧客は離れて行く。
これらの航空会社の事例は、極端すぎるかも知れない。しかし自社の現場前線でこの様なほころびが発生していないか点検してみてはいかがだろうか。ほんの小さな齟齬が取り返しのつかない大問題になる事はままある。
私の個人的な感想であるが、UAという会社の組織は自由闊達からほど遠い所にある様だ。経営状態は分からないが、この会社に未来があるとは思えない。前職時代に、米国西海岸に出張する時にUAを使った事がある。客席乗務員が、全員中年の女性だった。中には老眼鏡を着用している女性もいた。帰国後航空会社に詳しい友人に聞いた所、UAは太平洋路線に乗務すると、乗務明けに必ず休暇を取る事になっている。太平洋路線は、先輩の客席乗務員によってシフトが埋まり、若い客席乗務員は大西洋路線のシフトが割り当てられるそうだ。
まるで体育会系運動部の様な組織だ。私の感想は20年程前のナイトフライト一回だけの経験に因るモノであり、未だにUAは営業を続けているので、私の見立ては間違っているのだろう(笑)
このコラムは、2017年4月17日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第524号に掲載した記事です。
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