「人誑し改善」などというと何か怪しげなことのように聞こえるが,メンバーをその気にさせるための「人誑し」だ.女性の関心を言葉巧みに惹きつけて,こちらの思い通りに動かしてしまうのが「女誑し」だ.それを女性に限らずやってしまうので「人誑し」といっている.
改善をするためにはまず現場のリーダがその気にならなければうまくゆかない.
トップダウンで「こうヤレ!」とやれば手っ取り早いように見える.
しかしリーダがその気になっていないと暫くすると元の木阿弥になってしまう.
そこで「人誑し」を駆使する.
特に私たちのように外部の人間が改善をする場合は「人誑し」が必要だ.外部の人間なので,リーダたちに対する「人事考課」という伝家の宝刀は抜けない.
彼らは外部の人間のいうことを聞かなくても何も困らない.上司に対しては改善策を試してみたがうまくゆかなかったと報告しておけば丸く事は収まる.
今までの方法でできているのに,変えるための余計なエネルギーは使いたくは無いだろう.今までどおりやっておけば何も苦労をすることは無い.
それを一歩踏み出すためのモチベーションを与えるのが「人誑し」だ.
やる気にさせるためにはまず「メリット」を理解してもらうことだ.
例えば,改善をすると○○%生産性が上る.というのは彼らにはそれほど高いメリットにはならない.改善するために作業者に頑張ってもらわなければならないようだと,メリットどころかデメリットになる.リーダたちは嫌がる作業者を説得するという余計なエネルギーを使わなければならない.
従ってメリットは「作業者が楽になる」「作業が安全になる」などなど作業者よりのメリットを前面に出す必要がある.その上でリーダ個人のメリットを訴求する.
更にこちらを信頼させる事が重要だ.
きっとうまくゆくという確信を持たせることだ.自分自身で不安を持っていれば,確実に相手に伝わる.まず自分自身で理論武装をしておく必要がある.
例えば,簡単に改善できそうだということを具体的に現在の方法と比較して理解させる.これを分かりやすくやる.
このあたりの作業が言葉巧みに相手の関心を惹くという「人誑し」の技術だろう.間違ってはいけないのは「人誑し」であっても「詐欺師」になってはいけないということだ.
仕事上で相手が困っていることをいとも簡単に解決してあげる.一種のプレゼント作戦だ.こちらが味方であること,解決能力があることを印象付けることも狙いだ.
最後にこの改善がワクワクするほど楽しいと思い込んでもらう.
言うほどは簡単ではないが,仕事が楽しいと思い込んでしまえばものすごいパフォーマンスを発揮する.
私は事あるごとに褒めるという作戦をとっている.
このコラムは、2009年8月10日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第111号に掲載した記事です。
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