高離職率


 先週の雑感「離職率と多能工化のジレンマ」に読者様からメッセージをいただいた。

※F様のメッセージ
 深セン市にある弊社は、日系の電子部品生産会社で、従業員1100人程度です が、作業員の離職率の高さ(定着率の低さ)が喫緊の課題です。今回の離職率に関する雑感は、同感です。

F様の工場では試用期間(3ヶ月)以内に辞めて行く従業員が多いそうだ。離職率が高いと言ってもそれほど高い訳ではない。しかし従業員数が多いので、毎月数十人採用し続けなければならない。
先週ご紹介した中国企業は、離職率が更に一桁高い(苦笑)今まで色々な工場を見て来た私にとっても、衝撃の離職率だ。

ご紹介した中国企業の場合は、1週間以内に辞める者が多いそうだ。
彼ら自身の分析によると、募集時に提示している給与に引かれて応募して来る者が多くあるが、その給与が毎日3時間残業込みの金額である事が、1週間で分かり、辞めて行く。と言う事だそうだ。

では、一人当たりの生産性を上げてより多くの給与を支払える様にする、と考えれば良いのだが、先週のコラムに書いた様にあまりに離職率が高く作業員の教育訓練の暇がない。そのため作業を単純化し大量の人員で生産。離職率は改善されず、悪循環のままと言う状況だ。

離職率の高い企業には共通点があると感じている。
新しく入って来た従業員の「居場所」がないのだ。居場所とは抽象的な言い方だが、安心して居られる場所と言う意味だ。組織や一緒に働く者が自分に関心を持ってくれている、自分の存在を認めてくれる、と言う感覚の事だ。

デール・カーネギーは「人を動かす」の中で、組織や仲間に必要とされている、組織や仲間に対して貢献出来ていると感じれば、人はモチベーションが上がると言っている。

参考:「人を動かす」デール・カーネギー著

工場経営の師匠原田則夫師は、新人採用時に1週間かけて新人教育をしていた。
新人研修の講師は二年目の工員がボランティアで担当する。

新人研修の後、職場に配属されると3ヶ月は班長と交換日記を義務付けられる。交換日記制度で、新しい環境に対する不安を取り除き、企業文化に慣れさせることができる。日記で新人の心の変化が読み取れるので、班長から適時適切な対応が可能となり、新人の離職が防げる。新人は、班長から自分に対し関心を持ってもらっている、組織から守られていると言う感覚を持つので、辞めようとは思わない。それでも辞めようと思う人は、組織文化に合わないので早めに辞めてもらった方が良い、と言うことになる。

新人教育の教師役を2年生の工員が担当すると言う所にも秘訣がある。教える為に勉強するばかりではなく、教えると言う行為が自分に自信を与える。組織や、新人に対して貢献出来ていると言う実感を持つ事になる。

教えあい、学びあう。互いに尊重する。そんな風土・文化があれば、居心地が良い組織になると思う。その結果離職率も下がるはずだ。


このコラムは、2017年7月3日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第535号に掲載した記事に加筆しました。

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