利己と利他


 「利己」とは自分の利を中心に物事を考えたり,行動する事だ.
一方「利他」とは他人の利を先に考えたり,行動する事だ.

利己と利他を公式で表現すると,以下の様になる.
利己:自分が支払うコスト<相手から自分が受け取る利益
利他:相手が支払うコスト<自分が相手に与える利益

つまり利己とは,相手から受け取る利益よりも自分が支払うコストを減らそうと言う考え方や行動である.自己努力により,相手から受け取る利益を一定のまま,自分が支払うコストを減らす努力は,利己とは言わない.
自分が得る利益(対価ーコスト)を増やすために,相手が受け取る利益を減らす事が利己だ.

利己の人は,相手から利益を奪い取る事を優先して考える.

利他とは,相手が受け取る利益よりも自分が支払うコストが大きくなってもかまわないと言う考え方や行動だ.むしろ相手が利益を受け取れるのならば,自ら進んで自分のコストを支払う,と言う人が利他の人だ.

つまり利他の人は,相手に利益を与える事を優先して考える.

どちらが成功するかと言えば,当然利己の人だ.
利他の方が聞こえは良いが,自分の利益を考慮せずに相手に利益を提供しようと言うのは,ボランティアでしかない.崇高な生き方かもしれないが,ビジネスとしては成功出来ない.

こう考えておられる方が大半だろう.二宮尊徳翁も「経済なき道徳は寝言である」と言っておられる.あなたは,いかがだろうか?

短期的な視野で物事を考えれば,利他の人の利益を利己の人が吸い取る構造だ.
しかし長期的な視野で考えると,利己の成功は短期的であり,大成功するのは利他だと思う.

利己のビジネスは,狩猟型のビジネスであり次々と狩り場(新規顧客)を開発する事が必要だ.

一方利他のビジネスは,農耕型のビジネスであり顧客や市場を育成する.その結果ロイヤリティの高い顧客が増え,顧客からの紹介で更に顧客が増える.

利他とはただ単に,相手に献身的な貢献をする事ではない.
相手に献身的な貢献をすることにより,利を得る事だ.

貢献(相手が受け取る利益)が目的であり利は結果だ.
これを間違えて,利を目的として貢献をしようとするから,利己になる.

営業経験がない私が独立した時に決意したのは「利他」を押し通す事だ.

無料工場診断に出かけると,そこまで教えちゃうの?と同行者があきれる程のノウハウを教えてしまう.訪問先の経営者からは,目から鱗でしたと感謝をいただく.
ある工場では,訪問して1週間後に,ここまで改善出来ましたと,写真入りでレポートを送って来てくれた.

同業のコンサル会社を何社も無料で指導している(時々晩ご飯をご馳走して貰っているが・笑)

このようにして集めた感謝が,後に収入・利益になるはずである.


このコラムは、2013年7月29日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第320号に掲載した記事です。

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