「滑らない」靴下


受験「滑らない」靴下、本当に滑らない 特殊技術に自信

 【小林正典】受験生に「滑らない」靴下を──。靴下の産地、奈良県大和高田市にあるメーカーが「合格印ソックス」を開発した。単なるだじゃれにあらず。特殊な滑り止めの技術は共同特許申請中。地元の神社で合格祈願してもらった「ほんまもん」だ。

 靴下の滑り止めは従来、足裏部分に外側から樹脂のいぼを付ける手法がほとんど。ただ、長時間歩くと足裏が痛くなることも多い。ポツポツの浮かぶデザインがやぼったい、と若者にも敬遠されがちだった。
 「西垣靴下」では、滑らない素材、ポリウレタンを編み込む新技術を素材メーカーなどと開発。滑らない糸は編み機に引っかかりやすく、編むのが難しいとされてきたが、この技術により靴下の中でも足が泳ぎにくくなった。

 技術を生かすアイデアは若手社員から出た。3月の開発会議で、当時入社1年目の雁野(がんの)ほのかさん(23)が「滑らないといえば受験」と提案。地元の神社「龍王宮」の協力も取り付けた。白と紺のほか、アーガイル柄4色の計6種類。神社名にちなみ、昇り竜の銀色のマークを付けた。
 雁野さんは「私も受験の時は苦労した。靴下は実際に身につけて臨めるので、心強いはず」。関連会社「エコノレッグ」がインターネットを中心にミニ絵馬とセットで販売中だ。限定400足で、価格は1509円(税抜き)。

 奈良県靴下工業協同組合によると、県の2012年の靴下生産量は、全国の約57%を占め、全国トップ。だが1991年のピークからは約4分の1に減った。西垣和俊社長(55)は「海外の製品と価格競争するのではなく、この商品を入り口に、メードイン奈良の靴下の良さを認識してもらいたい」と話した。

(日経新聞電子版より)

 靴下と言えば、既に中国生産を通り越えてベトナムに行ってしまっただろう。コストだけを考えていれば、こうならざるを得ない。製品の付加価値をいかにして高めるか?と言うのが課題になる。

付加価値と言うのは、機能価値の事だけではない。例えば滑らない靴下が、通常品の倍の値段で売れるか?私自身靴下が滑って困ると言う経験をした事がない。滑り止めと言う機能には、倍の価格を支払う付加価値はないだろう。

ファッション性、話題性など機能とは別の所にも付加価値が生まれる。

靴下と言うのは、実に地味な商品だと思う。文字通り足元を支える物であり、靴下が主役になる事はほとんどない。

以前山梨にある機械メーカを訪問したことがある。駅から工場まで乗ったタクシーの運転手さんが、鮮やかな黄色の靴下をはいていた。ファッション的には,常識はずれのひどい選択だ。目的地の工場に到着して分かった。この街を本拠地としている機械メーカの企業色が黄色だったのだ(笑)社屋の外壁が全部黄色だった。

靴下が自己主張する場面と言うのは、極わずかだろう。
そんな気の毒な靴下に機能以外にアイデンティティを与えたのが受験靴下だ。しかし残念ながら、ビジネスとしての規模を持てるかどうかはかなり微妙だ。受験生向けの商品で話題を作り、会社を認知していただく。その後継続的に買っていただける商品を開発する事が必要だ。

さて、靴下と言うコモディティ商品をどうしたら継続的に購入していただける付加価値を持たせることができるだろうか?あなたもぜひ思考訓練をしてみていただきたい。
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なお、ソーシャルモノ造り分科会のメンバーは率先してアイディアを投稿いただきたい。一人一件ノルマだ(笑)


このコラムは、2013年10月7日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第330号に掲載した記事を改題・加筆しました。

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