喜ばしい成長、でもヒヤリ 暮らしの中の子どもの安全


 朝日新聞に子供の事故に関する特集記事が掲載されていた。

「小さな命 事故予防を考える」

転落事故。
浴槽の残り湯に落ちて溺死。
異物を飲み込んで窒息死。
ライターによる火災発生。
飲水機によるやけど。

大人にとって何でもない事が、子供には命の危機となりうる。
製品にもそのような危険を回避する工夫がしてある。

使い捨てライターは、子供の力ではレバーを押せない様にデザインする事が義務づけられている。
飲水機のレバーも押しただけでは熱湯が出ない様に設計されている。
車の扉にはチャイルドロックが装備された。
一定以上大きさの包装用ポリ袋は、頭からかぶっても窒息しない様に穴を空けることが義務づけられている。
最近では歯ブラシをくわえたまま転倒しても怪我をしない様に歯ブラシの柄が柔らかい素材で出来ていると記事には出ていた。

しかし考えてみると、私が子供の頃はそのような対策はしてなかった。
おとなしかった(笑)私は、危険な事をして親を驚かせる様な事はなかった。
しかし活発な弟は、さんざん親をはっとさせた。

10円玉を飲み込み、足を持ってぶら下げて吐き出させた。
公団住宅の階段で遊んでいて額を切りしたたか出血をして帰って来た。
近所の犬をからかって股間をかまれる。
三輪車に乗って路地から飛び出し、通りかかった車の後輪にぶつかり転倒。
この時は一歩間違えば命はなかっただろう。
彼は母親が家事をしている最中は廊下の柱に帯ひもでつながれていた(笑)

私が子供の頃は、特に子供の安全を意識して製品開発されていたとは思えない。
当時と現在を比較して子供の怪我が減っているのだろうか?統計データがあるのかどうか分からないが、今の方が子供の命に関わる事故が多い様に思う。

この記事の「子供」を「作業員」に置き換えて読んでみるとどうだろう。
ある工場では頭にガーゼを当てた従業員がいた。この工場では作業員に安全帽の着用を義務づけていない。
他の工場では、安全規則を遵守せず怪我をした従業員に罰金を科したという告知が掲示板に張り出されていた。

記事には、事故予防の「3E」として環境改善(Environment)法規制・基準化(Enforcement)教育(Education)が有効なアプローチだと記してある。

罰金は教育(躾)の一種かも知れないが、それほど効果があるとは思えない。
それよりも「ヒヤリハット事例」を公開し、朝礼などで繰り返し共有する方が有効だと思う。たまたま見つかった安全規則違反に罰金を科料しても、ついてなかったと思うだけだろう。それよりも、管理者が従業員の安全にどれほど心を使っているかと言う、真剣な心配を伝える事の方が大切なのではなかろうか。

私たちの母親は、危ない事をした弟を泣きながら叱った。横で見ていた私の心にも深く刻まれている。私達兄弟が大過なく成長出来たのは、母親の愛情のおかげだと思っている。

事故が起きてから従業員の過失を責めても手遅れだ。ヒヤリハットを起こした従業員を愛情を持って叱るのが、経営者や管理者の役割だと思う。


このコラムは、2016年9月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第493号に掲載した記事に加筆修正しました。

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