「十点法」という言い方をご存知だろうか.
あまりいい名前ではないが,部品の定量投入によるポカよけの一種である.
例えばネジ締め作業で必要なネジの数だけ作業前に取り置き,作業が終わったときにネジを過不足なく使用したことを確認するわけである.これによりネジの閉め忘れとか,製品の中への落下などを防止するわけである.
すなわち10点部品を使うならば,10個の部品を投入するという意味で「十点法」と言う命名になっている.
中国の工場で指導をしていた時に,製品組立工程でネジを5本締め付ける工程があった.このとき現場の組長さんに「このネジが一本足りなくなったらどうする?」と聞いてみた.
この組長さんは大変聡明な子ですぐに小皿を持ってきて,作業者に作業前にネジを必要数準備してから作業をするよう指示をしていた.
普通の組長さんだと,次の工程にネジの数を数える検査を追加したりする.
この方法でもネジの締め忘れがないことを保証できるかもしれないが,製品の中にネジが落下したのは検査できない.
それよりも,付加価値を生まない作業を増やしていることになる.
検査を追加することよりも,作業で品質を保証する仕組みを考えるべきだ.
製品に貼り付けるラベルを貼り忘れ,出荷先で見つかってしまった事がある.
この手の不良は厄介である.客先に出荷してしまった製品の選別検査,社内の完成品の再検査など,後向きの作業が大量に発生する.
客先にも改善対策を提示しなければならない.
当然工程内には外観検査があり,ラベルが貼ってあることも検査している.作業者がうっかり貼り忘れ,検査者もうっかり見逃したわけである.
うっかりの二乗なので,確率はかなり低いはずであるが往々にしてこういう事故はある.
殆ど不良が発生しないと,検査者の感度は落ちてしまうのであろう.
こういうときに「十点法」が活用できる.
ラベルを梱包単位に準備し,ラベルを使い切ったらラベルシールの台紙をベルトコンベアに載せる.梱包作業者はラベルシールの台紙が流れてきたら,梱包箱が一箱完成しているのを確認する.
ラベルを貼りそこなった場合の対処方法など,一工夫する必要はあるが,この方法はそれほど工数をかけずに,ラベルの貼り忘れがないことを保証できる.
同時に梱包数量の確認も出来ている.
読者の皆様の工場でも,同じような方法で改善できる事例がないだろうか.