【華南マンスリーコラム】クリップボードでコミュニケーション


全能力を駆使したコミュニケーション
#6
 現場に出るときはいつもクリップボードに白紙を挟んで持ち歩いている.私の大事なコミュニケーション手段の一つである.
 現場のリーダーたちに英語や日本語でのコミュニケーションを期待しても無理がある.当然中国語でコミュニケーションをしなければならない.
 現場では話す,聞く,書く,読む,描く,見る,身振り,手振り,全てのコミュニケーション手段を活用して指導をしている.
 そんな時に役に立つのがクリップボードだ.現場で問題点や改善点を図解で説明する.これで意思疎通が可能である.更にその後のリーダーの行動をきちんとフォローをすれば,理解できているかどうかを判断できる.
通訳に必要な能力は日本語ではなく正しい中国語を話せること
 もちろん通訳を使った方が簡単かもしれない.しかし通訳を信頼しきるのも問題である.
 通訳たちは日本語を勉強した日本語の専門家である.必ずしもその現場の仕事に精通しているわけではない.
例えばプラスチック成型工場の通訳で,イソプロピルアルコール,エタノール,メタノールをすらすらと中国語で言えるだろうか?ある種のアルコールはプラスチックにダメージを与える.重要な事だ.
 日本語検定2級,1級を持っている通訳でもすぐには使い物にはならない.現場で徹底的に鍛えないと使い物にはならない.
私が1年半一緒に仕事をした通訳君は,元々営業職であったが,私との仕事を通して一人前の品質エンジニアに成長した.
 現場の通訳として重要な能力は日本語を上手に話せることではなく,私の考えを中国語で平易に話せることである. 
難しい事を平易に説明する
 平易に説明する,というところが重要である.通訳がいても自分で説明しようとするポイントはここにある.
現場のリーダーが理解できるまで,手を変え品を変え例を示して説明する.
 難しい事を難しく説明するのでは能がない.クリップボードの白紙に図解で示して平易に説明する.このように難しい事を平易に説明する能力が現場指導には重要だ.

このコラムは中国華南地区で発行されている月刊ビジネス雑誌「華南マンスリー」2008年4月号から1年間連載した「炎の小道具12選」に寄稿したものです.