軽装の女性客、行き先は冬山 決意したタクシー運転手
奈良県宇陀市の近鉄榛原(はいばら)駅前で1月中旬、タクシー運転手の森田義彦さん(68)はひとりの中年の女性を乗せた。女性が告げた行き先は東吉野村の高見山の登山口。標高1248メートル、冬場は登山客に人気の山だ。
(以下略)
(朝日新聞デジタルより)
女性乗客の様子がおかしい。タクシー運転手は気がつき女性に話しかけるが、女性は上の空。運転手・森田さんは意を決して車を止め「命を絶とうとしてるんと違う?」と問いかけ、榛原駅まで戻り交番に女性を預けた。
初めて会った人に「自殺しようとしてないか?」と問いかけるには相当の勇気が必要だっただろう。その勇気が一人の命を救った。
我々の生産現場でも同様なことはある。
改善のアイディアを思いついたが上手くいかなかったらどうしようと、躊躇する事があるだろう。ここで勇気を出して行動しなければ、進歩はない。
「駄目元改善」という言葉がある。
「ダメでもともと」上手くいかなくても、命まで取られるわけではない。
「ダメなら元に戻すだけ」今まで問題はあっても生産できていたので、改善できなくても、元に戻せばいいだけ。
「駄目元改善」はこの二つの意味を持っている。
駄目元改善の極意は「金をかけない」だ。
改善のために立派な生産設備を導入してしまうと、元に戻せなくなってしまう。極力LCA(ローコストオートメーション)を目指す。設備を作る前に効果を検証する。
以前リードタイム短縮のためにインライン乾燥炉を検討した。半田付け部分に絶縁材料を塗布し、まとめてラインアウトし自然乾燥後に次工程に投入していた。この工程だけで2時間停滞時間が必要だった。生産スペースの都合上インライン乾燥炉は1m以下にする必要がある。ここでいきなり乾燥炉を作ってしまうと乾燥が不完全となる可能性がある。
ここでエイやっと設備発注するのは「勇気」ではなく「蛮勇」だ。
小型のコンベアを段ボールで覆い布団乾燥機を使って温風を吹き込んで実験。コンベアのスピード、温風の温度設定を確認してからインライン乾燥炉を発注した。
この改善だけでリードタイムが2時間短縮できた。
失敗を恐れない勇気に必要なのは、とりあえずやってみる、駄目元の組織文化だと思う。試しにやって見てダメならば、別のアイディアを考えれば良いだけだ。
このコラムは、2020年2月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第940号に掲載した記事です。
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