PISA調査


 先週の新聞にPISA調査に関する記事が出ていた。
PISA(Programme for International Student Assessment)調査とは、OECD(国際経済協力機構)が実施している学習到達度調査のことである。
15歳(高校1年生)を対象に「数学的応用力」「科学的応用力」「読解力」の学習達成度を2000年から3年おきに調査している。日本では外務省下の教育委員会・教育研究革新センターが取り組んでいる。

2018年実施したPISA調査結果が先週公表された。
新聞各社は以下のように報道している。

「読解力」15位 自由記述、正答率の低さ目立つ

読解力は15位(平均得点504点。OECD平均は487点)で、8位(同516点)だった前回調査(2015年)から順位を落とした。
テキストから情報を探し出す問題や、テキストの質と信憑性を評価する問題、自分の考えを根拠を示しながら説明する自由記述形式の問題で正答率の低さが目立ち、正答率が8.9%(OECD平均は27.0%)の自由記述問題もあった。また、前回、前々回(2012年)と比べ、習熟度の低い(408点未満)生徒の割合が増えた。

《朝日新聞》

「日本の15歳の読解力、過去最低の15位」

 OECD学力調査 科学・数学は上位維持
経済協力開発機構(OECD)は3日、世界79カ国・地域の15歳約60万人の生徒を対象に2018年に行った学習到達度調査(PISA)の結果を公表した。日本は読解力で前回の15年調査の8位から過去最低の15位に後退した。科学的応用力は5位(前回2位)、数学的応用力は6位(同5位)となり、それぞれ順位を下げたが、世界トップレベルは維持した。
PISAの18年調査では読解力を重点的に調べ、日本では全国の高校など約180校の1年生約6100人が参加した。03年調査では日本の順位や平均得点が下がり「PISAショック」と呼ばれた。特にトップレベルにあった読解力は14位と急落し、文部科学省が「脱ゆとり教育」の路線を本格化した。12年調査では4位まで回復したが、15年調査では再び8位に下がった。

18年調査の日本の読解力は、平均得点が504点となり、OECD加盟国の平均(487点)より高かったものの、15年調査より12点下がった。日本の生徒のうち、408点未満の最下位グループは16.9%と15年調査よりも4ポイント増加した。

《日経新聞》

PISAで読解力低下 長文に触れる機会作りを

PISAは日本の教育政策に大きな影響を与えてきた。2003年調査でも読解力や数学の順位が大幅に低下し「ゆとり教育」が原因と指摘された。それを機に、全国学力テストが始まり、学習指導要領が改定されて授業時間が増えた。
 その後、順位はいったん回復したが、前回は再び低下に転じて参加国・地域中8位となり、今回はさらに15位まで急落した。

《毎日新聞》(社説)

「PISA調査 日本の読解力低迷、読書習慣の減少も影響か」
本や新聞などをよく読む生徒の方が平均点は高く、読解力低下の結果には、読書量の減少も影響しているようだ。
日本の読解力の順位は、前々回の2012年調査では過去最高の4位だったが、前回の15年は8位、今回は15位と急落した。
文科省によれば、小6と中3を対象に毎年実施し ている全国学力テストなどでは特に学力低下の傾向はみられないといい、同省担当者は「今回のPISAで読解力がなぜ低下しているのか要因を特定するのは難しい」と話す。

《産経新聞》

PISAで読解力低下 長文に触れる機会作りを
PISAは日本の教育政策に大きな影響を与えてきた。2003年調査でも読解力や数学の順位が大幅に低下し「ゆとり教育」が原因と指摘された。それを機に、全国学力テストが始まり、学習指導要領が改定されて授業時間が増えた。
 その後、順位はいったん回復したが、前回は再び低下に転じて参加国・地域中8位となり、今回はさらに15位まで急落した。
 とりわけ日本の正答率が低かったのは、ある程度長い文章から求められた情報を探し出したり、書かれていることの信用性を評価して事実なのか意見にすぎないのかを判断したりする問題だ。

《毎日新聞》(社説)

各社「読解力」の低下を大きく取り上げており、その原因を

  • PC操作(調査はPCで回答する)に慣れていない。
  • SNSなどで短文やアイコンだけのコミュニケーションばかりしている。
  • 新聞、書籍などの長文を読む機会が少ない。

などとしている。

新聞社は営業的に、ラインやツィッターよりもっと新聞や本を読めと言いたいのだろう(笑)

しかしこういう調査で一喜一憂するのもどうかと思う。
確かにPISA調査結果によって「ゆとり教育」の間違いに気がつき、修正されたという利点はあった。今回も教育現場のICT化が加速するかもしれない。

しかし平均値だけを比較して一喜一憂する意味があるだろうか。
母集団の代表値として平均値を使うことはある。しかしばらつきを考慮する必要もあるだろう。

参考図書:「平均思考は捨てなさい」
戦闘機のコックピットを設計するために多くの空軍兵士の体のサイズを測定し平均的空軍兵士の体格を見出したが、それに合致する兵士は一人もいなかったそうだ。

ところで、PISAで高得点を取るのは簡単だ。灘高校、開成高校などの進学校から受験者を選べば良いのだ。
中国は全国からサンプリングせずに北京、上海、江蘇省、浙江省だけを選んでいる。前回(2015年)は広東省が入っていたが、成績が思わしくなく、浙江省に変えられたのだろう(笑)2015年の成績は中国は3つのカテゴリーすべてで日本より劣っているが2018年はすべてのカテゴリーで中国が日本より高得点を取っている。
PISAは「メンツ」のために実施するのではなく、自国の教育を改善するために実施すべきだろう。


このコラムは、2020年1月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第927号に掲載した記事です。

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