金魚鉢理論


原田則夫師の経営手法にはそれぞれユニークな名前がついている.
「金魚鉢理論」もその一つだ.
金魚を飼うためには金魚鉢の水を時々入れ替えてやらなければならない.
それも上から大胆に入れ替えてしまう.
これを組織の人財活用に当てはめたのが「金魚鉢理論」だ.
組織の中の人財は時々入れ替えなければ,組織の停滞してしまう.
それも人財の上のほうからごっそり入れ替えてしまわなければならない.
以前ご紹介したように原田師の工場では,人材登用制度が機能している.
文員(スタッフ職員)に欠員ができると社内公募がかかる.一つの職位に対し数百人の一般作業員が,一斉に応募してくる.
数百人の応募者は試験と面接(原田師は「人民裁判」と呼んでいる)により選考された職員は晴れて文員になることができる.
この仕組みがきちんと機能するためには,常に人材が流動していなければならない.
上位職がいつまでも居座っていると,その組織の2番手3番手の職員は昇進のチャンスがなく,閉塞感を持つ.閉塞間の漂う組織には,より挑戦的な仕事,成果を期待することができない.
組織が停滞してしまい成長が止まってしまう.
金魚鉢の水が古くなり,金魚たちが酸欠状態になるのと同じだ.
このような状況を打破するのが「金魚鉢理論」である.
常に組織の中の人財を上位職から入れ替えてしまう.それにより組織の2番手3番手の職員にチャンスが回ってくる.彼らはよりモチベーションを上げて自己成長に取り組むことになる.
つまり下からどんどん人財が成長してくる.そして上位職が入れ替わることにより更に成長のチャンスが得られる.
職員一人ひとりの成長が組織の成長となり,会社全体の成長を促進することになる.
それをサポートするのが「金魚鉢理論」だ.
2008年の4月に原田師の工場を訪問した時は,副社長を辞めさせていた.
我々は,原田さんが引退された後はこの副社長が社長として経営の舵取りをするものだと思っていた.
しかし彼を別の会社に転出させ,私を大いに驚かせた.
この人事により,
部長職にある人たちはみな「次はオレの番だ!」と張り切る.
転職した副社長はより高い給料を得られる.
転職先の会社は優秀な人財を手に入れることができる.
三方良しの経営手法である.