アリの社会


 アリの社会には「2:6:2の法則」があるそうだ。全体の2割のアリが、食料の8割を集めて来る。これはパレートの法則だ。「2:6:2の法則」はよく働くアリは全体の2割、普通に働くアリが6割、遊んでいるアリが2割、と言う比率になっていると言う法則だ。興味深い事に、働かない2割のアリを排除してしまうと、残った8割のアリがまた2:6:2の比率となり働かないアリが2割出て来ると言う。

ひょっとするとこれは人間社会にも共通の事かも知れないと気がついた。
つまり、組織の中で業績に貢献していない2割の社員を解雇しても、再び2割の社員が業績に貢献しなくなる。つまり遊んでいる社員2割は必要悪であり、首にしてはいけないと言う事になる。興味がわいて来て文献を調べてみた。

昆虫学者の研究によると、アリは仕事に対する閾値を持っており、目の前の仕事の緊急度が閾値を越えると行動を起こすそうだ。この閾値は個体ごとに違っており、閾値の低いアリが2割おり、彼らは非常に一生懸命働く。閾値が高いアリも2割おり、彼らはよほどの事がなければ行動を起こさない。残りの6割が普通に働くのだそうだ。

そしてこの閾値は、疲労によっても変化する。つまり疲れてしまったアリは、仕事に対する閾値が上がり働かなくなる。つまりさぼっているのではなく、疲労を回復するために休憩している、と言う事になる。彼らが休んでいる間に二番手の2割のアリ達が一生懸命に働くと言うのである。

もし全てのアリが同じ閾値であれば、皆がワァーと一生懸命に働く。経営者(女王アリ?)にとってはありがたい事かも知れないが、その結果全員が一気に疲労してしまう。これではアリの社会全体が機能しなくなる。閾値が違っており、頑張ったアリから順番に休憩に入る、と言うメカニズムになっているのだそうだ。

これは人間の組織でも同様なメカニズムが働くのではないだろうか?
トップ人財の貢献度が落ちて来ると、二番手の行動閾値が下がり頑張り始める。アリの社会ほど単純ではないかも知れないが、人間の組織でもこういう現象はあり得るだろう。

経営者としては、二番手三番手の社員の可能性を信じて、一番手を積極的に休ませる。休んでいる間に、二番手三番手が経験を積んで能力も上がるはずだ。


このコラムは、2017年6月5日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第531号に掲載した記事に加筆しました。

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