PCの品質劣化


ある書籍を読んでいて驚いた。
「工場で正常に生産され検査も合格したのに、市場で不良が発生する。これは出荷後に劣化するのが原因である」当然こういう事例はある。しかし著者はその事例としてパソコンを挙げている。彼の主張は以下の通りだ。

「購入して二年ほどでスイッチを入れてから立ち上がるまでの時間や画面の切り替え時間が目に見えて遅くなる。わずか二年で製品が劣化してしまうのは工業製品のトップグループに入る」

これはパソコンが劣化したのではなく、アプリケーションソフトの機能が進化したためメモリを大量に必要とし、しばしばメモリ領域のスワップが発生するためだろう。これを製品の劣化と言われてはパソコンメーカは立つ瀬がない。

著書の本質はそこではないし、OA機器メーカの開発設計者としての経歴があり、現在も後進の指導をされている方だ。著者を非難するつもりは全くない。

パソコンという商品は単体では何も役には立たない。アプリケーションソフトがあって初めて機能する。そういう意味では二年間で劣化したのではなく、たった二年で進化したと考えるべきだろう。

例はまずかったが、著者の指摘は正しい。
昔から出荷後の環境ストレスで色々な故障が発生している。
出荷時に良品だった製品が環境ストレスで故障する事例は多い。

信頼性問題

または出荷時に機能検査ができない製品もある。タカタのエアーバックも出荷検査で機能検査はできないし、爆発することもない。

環境ストレスによる劣化は製造や検査で解決できない。設計時に環境ストレス耐性を上げておかなばならない。そのためには多くの環境ストレス事故事例とその原因を知らなければならない。


このコラムは、2020年7月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1011号に掲載した記事です。

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