人の心にビジョンを描く


 自分自身の心にビジョンがフルカラーで、かつ日付入りで描かれている人は、そのビジョンが実現する可能性が高いと言われている。「フルカラー」というのは私の比喩だが、ビジョンが明快・詳細になっているという意味だ。

私の個人的な見解では、ビジョンを他人の心に描く事が出来る人はビジョンの実現可能性は、更に上がる。

考えて見れば、当たり前だろう。自分のビジョンを投資家の心に描く事が出来れば、資金調達の心配は無くなる。自分のビジョンを従業員の心に描く事が出来れば、従業員はビジョン実現のために一生懸命働いてくれる。

実は私の心にビジョンを描いた中国人経営者がいる。
自動車部品の工場を経営している中国人だ。彼はやたら「PK」という言葉を使う。「PK」とはペナルティキックの略称で、一騎打ちという意味だろう。「ビル・ゲイツとPK」などとしばしば発言するので、ただの大ボラ吹きだと思っていた(笑)彼のビジョンは、自分の会社をフォーブス500企業にする事だ。

私が指導していた当時、彼の工場は従業員100名弱の町工場だった。彼はビジョンを実現するために、先ずは従業員の給与を倍増させた。保安係、清掃係も例外なく上げた。

このあたりから、この男はただのホラ吹きではないと思い始めた(笑)

彼が同業の経営者の心にビジョンを描けば、合併により企業規模が一気に2倍になる事もあり得る。成功者は必ずしも一人で成功する訳ではない。同じ志の者が協力する事で成功への道は近くなるはずだ。

彼は私の心にはビジョンを描いたが、従業員の心には描ききれなかった様だ。
私にはドミノが一つずつ倒れていく予感がある。しかし従業員にはホラ話にしか聞こえなかった様だ。

経営者には、従業員の心を動かす表現力も必要なのだろう。


このコラムは、2017年5月1日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第526号に掲載した記事です。

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