経営戦略


 日本のモノ造り産業について考えてみた。
敗戦後壊滅的なダメージを得た日本のモノ造り産業が急速に発展した要因は優秀な人財が生産現場で必死に働いたからだと思う。何もかもを失った国民は、「豊かな生活を手に入れる」と言う渇望に突き動かされ、「会社人間」となり昼を夜に次いで働いた。

明治維新後「欧米列強に追いつけ追い越せ」と言う命題が国民を動かした様に戦後も「復興」と言う命題を国民が共有していた。当時は既に「手本」があり、それを真似すれば良かった。需要が供給を上回り、作れば売れる状態だった。

「安かろう悪かろう」と先進国から蔑まれた品質も、デミング博士の指導で飛躍的に改善。モノ造り日本、品質の日本と言う称号を得るまでになった。
米国から「不当競争」とされ、不公正な関税をかけられる。世界中から日本人は働き過ぎだと非難され、国は祭日をむやみに増やした。豊かになった国民は「ゆとり」に向かう事で、「渇望」は消滅。日本の復興を支えた「企業戦士」達は若者世代から「社畜」と蔑まれ、政府は労働時間の短縮に加速をかけている。

「追いつけ追い越せ」と一生懸命働いていたが、いつの間にか先頭を走っており、真似をする手本が無くなっていた。独自のモノを開発する気運が高まる。そしてPCに代表される同一規格大量生産品では台湾、中国に負ける。
独自の価値を提供するAppleに代表される企業には全くかなわない。日本の独自規格製品群はいつの間にか「パラカゴス製品」となる。

こういう状況を経営戦略の「失敗」と定義するのは行き過ぎかもしれない。
しかし我々の働き方を改革しなければ、このままではじり貧になるのは見えている。「働き方改革」は労働時間の短縮ではない。新たな創造するために働き方を改革すする、と言う事だと考えている。

命令服従型の組織で忍耐力を持って働く時代ではない。
説得納得型の組織で問題解決能力を発揮して来た時代もそろそろ終わりだろう。
新たな価値を創造する課題発見能力を磨く時代だと思っている。
横並び主義の日本の社会では、他人と違う考えを持っている人財をつぶす傾向がある。我々「昭和世代」が頼りなげに感じている「ゆとり世代」の多様な考えを活かす、そんな組織を作らねばならないだろう。

エイベックスが考える“ポジティブ”な働き方改革–未来を語る人事制度」と言う記事を読んでそんな事を考えた。


このコラムは、2017年12月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第604号に掲載した記事です。

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