派遣をきるな!


 82号のコラム「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るあるメーカーOB」にご感想をいただいた。

Z様からのご投稿
 「『うちは派遣を切りません』と言え」には、反論、大いにあります。派遣社員とは、本来、景気が悪くなるなど、生産を縮小するときには、きれるもの、きられるものだと思います。そういった正社員とは異なるポジション(雇用形態)として存在価値があるものです。
会社のために派遣社員も貢献してきたのも事実です。しかし会社のために貢献しているのは、社員だけでなく取引先(様々なサプライヤー、販売代理店・・・・・)も同じことです。
正規社員と派遣社員では、雇用体系が違うように給与体系も違います。高校新卒の場合、短期的には派遣社員の方が高収入であることは、少なくありません。多くの場合、結果として低賃金なだけで、本来は正規社員と同じ能力、同じ仕事であれば、リスク分高給でなくてはならないのです。
 多くの派遣社員は言います。「本当は正社員になりたい。」その気持ちはわかります。しかし、それと派遣社員の雇用が不安定であると言う処遇は別物です。これを取り違えると「派遣切り=悪」の図式になってしまいます。
「××の正社員になりたい。」と言う気持ちだけに肩入れしすぎると、多分優良企業は、数年すると過剰雇用のため没落する図式ができてしまいます。
 「ものづくり」に関して現実的に考えると、派遣社員の比率を上げるということは、それだけ正社員への負担は重く、正直なところ正社員は誰でも務まる職種でなくなります。
 以前工業高校を卒業して、現業に配属になった新入社員に話したことがあります。「以前なら君らの内のひとりが班長になればよかった。あとのメンバーは班長の指示通り、まじめに仕事してくれればよかった。しかしこれからは違うよ、全員が班長になって、指導や監督をする立場になってもらわなければならない。ただまじめに黙々と仕事するだけの人材を正社員として置いておけない時代になったんだよ。」と。
 かなり冷徹な意見ととられるかもしれません。君はバイヤーとして、ものを買うように人を扱おうとしていると批判されるかもしれません。しかし、僕の反論は、人を扱うようにものを買っています、と。(まったく屁理屈ですね。)
 それであっても、「『うちは派遣を切りません』と言え」と怒るOBのような方を僕は敬愛します。本文を読みましたが、一本筋が通っていますよね。このような方とは、意見が食い違ってもいっしょに仕事できると楽しいですし、勉強になります。

再びZ様からのご投稿だ。

バブル崩壊後に経営者が日本的な経営(長期安定雇用による現場力の向上を目指す)に自信をなくし、アメリカ流の経営手法に盲目的に飛びついたのが、元凶だと思う。

現場の人員を変動経費型にするため、派遣社員、契約社員という需要ができた。需要があるからそれを商売にする会社ができる。と言う訳だ。

派遣会社は安直に人さえ集めれば即経営が成り立つということで、志のない経営者がどんどんそういう商売に参入する。言ってみれば、人を集めて顧客企業に派遣すればそこで現場教育も経験も与えてくれるわけだから、自分達は
人をぐるぐる回しているだけで利益が出る。「モノ造りはヒト造り」の基本が忘れ去られた状態が続いていたわけだ。

またそういう働きかたを選んだ人たちにも責任はあるはずだ。背に腹を変えられなかった人たちもあるだろうが、特に若い人たちが刹那的にその日暮の仕事として派遣労働者というスタイルをとった人たちも有るだろう。

3者共に責任のあることを、人道的な切り口だけで批判したり同情したりするのは意味がない。むしろ口当たりの良い言葉だけで現実を覆い隠す結果になる。


このコラムは、2009年2月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第83号に掲載した記事です。

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