水虫薬の誤混入、健康被害113件に 交通事故も14件」
福井県あわら市の製薬会社「小林化工」が製造した爪水虫などの皮膚病治療薬に睡眠導入剤の成分が混入していた問題で、健康被害を訴える人が、新たに29人増えて計113人(8日時点)となった。北海道から熊本県まで約20都道府県に及ぶという。福井県と同社が取材に明らかにした。同社によると、運転中に意識が薄れるなど服用の影響とみられる交通事故が14件あったという。
(朝日新聞より)
誤混入というより、間違った薬剤で水虫薬を生産したようだ。
本来主成分の「イトラコナゾール」を入れるところを睡眠導入剤を投入し錠剤を生産した。
睡眠導入剤を投入してしまった原因を、「作業員が勘違いで量ってはいけないものを量り、袋に入れた」と作業員の人為ミスと説明している。
しかし人為ミスを原因とすると「作業員に注意した」「作業員に再指導した」「ミスした作業員を解雇した」などという効果の期待できない再発防止対策しか出てこないだろう。
「なぜミスをしたか」を分析しなければならない。
- 薬剤の瓶に名前ラベルがなかった。
- 薬剤の瓶の名前ラベルが消えかかっており読みづらかった。
- 配合指示書が間違っていた。
- 配合指示書が読づらく読み間違えた。
- イトラコナゾールと睡眠導入剤の保管棚が同じで取り間違えた。
- 睡眠導入剤がイトラコナゾールの代用として使えると思った。
- イトラコナゾールと睡眠導入剤がそばに置いてあり、間違って取った。
- イトラコナゾールを正しく準備したが、別の調剤中の睡眠導入剤を配合した。
などなど
これはありえないだろうと思える原因もたくさん挙げる。
それぞれの原因を消滅される対策をする。
今回の原因ではないと思われる原因にも対策をする。
今回の問題は、運転中に眠くなったり、意識を失えば直ちに人身事故となる。過剰な対策と思えても実施すべきだ。
皆さんの仕事でも人為ミスで大きな事故が発生することもありうるだろう。事故が起きる前に対策を実施すれば問題は発生しない。
小林化工は取り返しの効かない問題を発生させてしまった。せめて我々はこの事故に学び未然防止をしたいものだ。
原稿を書き上げた後に、本件により死亡事故が発生したという報道があった。
この記事により以下が明らかとなった。
- 投入すべき薬剤と間違えて投入した薬剤は、形状の異なる容器に入っていた。
- 薬剤の名称・ロット番号は容器に表示されていた。
- ダブルチェックは名ばかりで機能していなかった。
社長が発言した「厳密なるチェックができなかった」の意味を問われ、社長は「最終試験」について述べている。記事からは読み取れないが、薬が完成後その成分分析をしなかったようだ。
医薬品業界の常識はわからないが、完成品の出荷検査はやらないのだろうか?
ダブルチェック記録、作業記録だけを品質管理の記録として品質保証するのは無理だろう。今回の事故は、製品ロットごとに成分分析を実施し出荷の可否を判定していれば防げたはずだ。
このコラムは、2020年12月16日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1072号に掲載した記事です。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】は毎週月曜日に配信している無料メールマガジンです。ご興味がおありの方はこちら↓から配信登録出来ます。
【中国生産現場から品質改善・経営革新】