工場見学会


 先週私の工場経営の師匠からこんなメールが届いた。

昨日シンセン市内の現地系の某大手電子企業の幹部20名の訪問がありました。6時間の受入れ応対は全て弊社幹部で行った訳ですが、訪問直後の挨拶席上で弊社の人事部長が冒頭、

『皆さんの訪問を歓迎します!。・・・しかし、その前に皆さんにお聞きしたい事があります。
今日皆さん方がこの工場に来られた目的は見学ですか?、それとも遊覧ですか?』
と突然切り出したのです。
相手側の董事長が『当然見学です!』と答えるのに対して、
『皆さんの中で、今、記述ノートか手帳を何人が持っていますか?。私が見る限り20名中3名です。見学に来るのに記述する手帳も持たず手ぶらで来るような姿勢が古い中国の管理者の姿勢です。
又、皆さんの会社は製品を造る工場で、しかも今日は休日では無いと先程あの方に伺いました。
・・・なのに、今皆さんは私服でバラバラの服装身なりをされている。
皆さんの身なりと記述本も持たないその姿勢が、今のあなた方の悩みや問題を生み出しているのではないのでしょうか!?』

と話したのです。(もちろん、相手は董事長・総経理以下全員がこれを素直に受入れ、帰り際には『可能ならここの社員を出来るだけ多く受入れ、うちの会社の体質を大幅に変えたい』という中国的発言まで出てました(笑)。

大変すばらしい話で感動した。
ここに出てくる人事部長さんは若い中国人だ。
中国大手の会社から来られたおそらく年長者の董事長、総経理に対してまるで講義を受けに来た学生を叱るように諭される。なかなかできることではない。

このような中国人幹部を育てられた、正しく言えばこのような中国人幹部が育つ仕組みと仕掛けを作られた師匠の偉業に大変感心をした。

ちなみに私は勤め人時代に、日系のお客様の納期対応クレームに謝罪に行く際生産委託先の工場長(台湾人)を連れて行った事がある。お客様のローカルスタッフは彼の名刺にある職位を見てやけに腰が低かった。こちらはお詫びに訪問しているにもかかわらず、対応がすごく丁寧だった。

人を見ず職位を見ているのだ。それ以降もこういう人種が多いと感じてる。これは日本も同じかもしれない。

しかも董事長、総経理ともにそれを素直に受け入れたという点がすごい。面子を重視する人達が、訪問先の若い部長さんにガツンとやられたら怒り出すはずだ。それをすんなり受け入れさせたというのは、その部長さんの人格力だ。

「可能ならここの社員を出来るだけ多く受入れ、うちの会社の体質を大幅に変えたい」という当事長さんのコメントは笑うに笑えない。

企業の最強の競争力源泉は、このような経営幹部が育つ仕組みと仕掛け、企業文化そのものだ。よそから優秀な人材を受け入れることではない。


このコラムは、2009年1月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第77号に掲載した記事です。

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