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モノ造りからコト造り

 何度か「コト造り」に関してメールマガジンに書いた。

「モノは売らない,コトを売る」
「コトづくり」

今回もコト造りについて考えてみたい。
バルミューダの寺尾玄社長の話をラジオ放送で聞いた。
寺尾玄社長は、高校を中退。スペイン、イタリア、モロッコなど、地中海沿いを放浪。帰国後音楽活動をしていた。バンド活動を辞めたのちバルミューダを起業しておられる。モノ造りの経験はない。
彼は創業の思いをこう言っている。
「アップル、パタゴニア、バージンは自分たちがやりたいことをビジネスにしている。それは顧客を感動させ、それを共有することだ。」と言っている。

アップルは説明するまでもないだろう。アップルが提供するのはコンピュータやスマホではない。それらを使うことによって得られる感動体験だ。そのため彼らの社名から「コンピュータ」がなくなった。

パタゴニアはアウトドア用品を製造・販売している。
彼らの企業理念は「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」である。

バージンは、航空産業、音楽産業、携帯キャリア、映画館、鉄道、金融、宇宙産業、F1など多角企業グループだ。全二社とは全く違う業種の会社だが、彼らに共通しているのはモノやサービスを提供するだけではなく、提供したモノやサービスを通して顧客に感動を提供することだ。

バルミューダの最初の製品は扇風機だ。彼らが提供しようとしたのは扇風機ではなく「夏の午後を吹き抜ける心地よい風」という感動体験だ。空気清浄機、調理家電、照明器具どれも感動体験を商品コンセプトにしている。

最近スピーカをリリースしている。
寺尾社長は、自身が音楽活動をしていたので、音響製品は造る気はなかったと言っている。
音響製品のメーカは、いい音を作りたいと考えている。しかしミュージシャンはいい曲を作りたいと考える。「モノを作る」と「感動体験を提供する」の違いはここにあるようだ。


このコラムは、2020年5月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第978号の編集後記に掲載した雑感です。

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