「鉄パイプ落下の現場、業者変え作業再開 新たな防止策も」
和歌山市の12階建てビル屋上の工事用足場(地上約45メートル)から鉄パイプ(重さ約5キロ)が落下し、直撃を受けた通行人の男性(26)が死亡した事故で、中断されていた足場の解体作業が23日朝、再開された。発注元の会社によると、安全確保徹底のために業者を変更し、新たな業者が決まるまで作業を中断していたという。
(朝日新聞より)
NHKの報道によると、落下物が通行人や作業員に当たる事故はこの10年間で少なくとも44件発生、14人が死亡している。
本件死亡事故現場では、四日前に鉄パイプの落下事故が発生している。死傷者はなかったが「ヒヤリ・ハット事故」だ。
足場解体業者は鉄パイプを固定する金具が緩んでいたことが事故原因とし、以下の再発防止策を提示した。
- 金具がゆるんでいないかすべて確認
- 落下物を防ぐための防護ネットを設置する
- 鉄パイプに落下防止のロープを取り付ける
しかし工事再開後翌日、再び鉄パイプが落下し死亡事故となった。
上記の再発防止が行われていれば、事故は発生しなかったはずだ。
業者が再発防止を遵守しなかったと考えるのが妥当だろう。
しかし上記の再発防止は全て行ったのだろう。ただし再発防止に以下のような問題があったのではなかろうか。
- パイプ固定金具の緩みは全て確認した。しかし解体作業のために固定金具は緩める必要がある。
- 防護ネットは設置した。しかし足場全て解体撤去前に防護ネットを外してしまった。
- 鉄パイプ落下防止ロープは取り付けた。しかしロープの固定方法が悪く、パイプが傾いたときに落下した。
こんな状況が容易に推測できる。
つまり以下のようは状況だったと思われる。
- まとめ作業で固定金具を先に全部緩めてしまった。
- 全ての作業終了前に防護ネットを外してしまった。
- 落下防止ロープの掛け方が不適切だった。
今回の事故の真因は、再発防止策を安易に検討・実行したことだろう。
- 対策検討時のリスク検討が不足していた。
- 対策実施時の作業手順が現場作業員に明確に指示されていなかった。
せっかく「ヒヤリ・ハット」の時点で事故防止のチャンスがあったのに残念だ。
「千丈の堤も蟻の一穴から」のたとえ通り安全事故の防止対策は細心の注意力を以てせねばならない。
このコラムは、2019年11月27日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第907号に掲載した記事に修正・加筆しました。
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