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対処療法

 先週指導先の生産現場で作業員がペンチの柄で製品をたたいているのを発見した.理由を聞いてみると金属製のケース上下を組み合わせると隙間ができてしまうので修正しているという.

まずはペンチの柄でたたくのを止めさせ,小さなプラスチックハンマーを持ってこさせた.
今回初めて量産試作する製品だ.ナゼ隙間ができるのか聞いても要領を得ない.

現物を見ると,金属ケースの加工が図面どおりでなく隙間ができているようだ.図面を持ってきて調べてみろといってもなかなか図面は出てこない.

そのうち品証の責任者が来て,このくらいの隙間ならばOKと判断して帰ってしまった.この工場では品証の役割は良品・不良品の判定だけのようだ.本来であれば,品証は図面と現物を見て現物がきちんと加工できているのか,設計は正しいのか判定しなければならない.その上で次回の生産からどう対応するか決定する.それが品証の役割のはずだ.

現在加工している製品をどうするか,どのレベルで良品と判断するかはたんなる「対処療法」でしかない.対処療法だけでは次回からの本格量産でも作業員は製品を叩き続けなければならない.これでは生産性を阻害するばかりではなく,新たな不良を作りこむことになる.

特に今回は量産試作なのだから,生産開始から設計,生産技,品証が合同で品質,加工性,作業性などについてきちんと現場でレビューをすべきだ.そうでなければ量産が開始された後も品質・生産性が改善されることなく生産を継続しなければならない.

この工場には,品質保証のあり方,商品化フェーズに合わせて何をすべきかなど初歩から叩き込まなければ,進歩はなさそうだ.


このコラムは、2009年7月20日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第107号に掲載した記事を修正・加筆したものです。

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