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ポカミス

 以前作業ミスに関する記事を書いた.

「作業ミス対策」

作業ミスの中でも「ポカミス」分かっているけどついうっかりやってしまうミスについて今回は考えてみたい.

ポカミスが発生する原因として

  • 疲労によるミス
  • 注意力散漫に夜ミス
  • 非熟練によるミス

などが考えられる.

人が作業をすれば必ず疲労やそれに伴う注意力の散漫が発生しうる.また作業環境によっては注意力が散漫になることもありうる.

そのため作業のムダ取りをして作業者の疲労を軽減する.
職場環境を整え,集中力が落ちないようにする.
といったことは必須であるが,これだけでは十分では無い.

ポカミスが発生しないようにする.万が一発生しても次工程に抜けてゆかないようにする.いわゆる「ポカよけ」と「ダブルチェック」が必要だ.

「ポカよけ」というのはミスができないようにすることだ.
例えば取り付け方向を間違えないように,取り付けネジ位置を非対称にする.こうしておけば反対方向に取り付けようと思っても組み付かない.

コピー機を開けるとやたらレバーがあり,それを解除しないと感光ドラムやトナーを交換できないようになっている.このレバーを戻し忘れると扉にぶつかって閉まらないように設計されている.これもポカよけだ.

「ダブルチェック」というのは文字通り2回チェックすること.
作業をした本人がチェックをし次工程の作業者がもう一度チェックする.一人だけでもダブルチェックは出来る.しかし単純に2回見ただけでは「ダブルチェック」にはならない.

例えばネジ締めをする場合,必要なネジをあらかじめ取りおいて作業完了後にネジの過不足が無いことをチェックする.こういう確認が「ダブルチェック」になる.

旅客機に乗ると駐機スポットから切り離される際に「乗務員はドアをオートモードにして相互確認してください」という機内放送が流れる.これが「ポカよけ」と「ダブルチェック」だ.

旅客機は万が一の際に扉を開けると脱出用のシューターが飛び出してくることになっている.しかし駐機スポットで扉を開けるたびにシュータが飛び出すとちょっと厄介だ.
そのためマニュアルモードというのが設けてあり,通常時扉を開けるときはマニュアルモードにしておく.飛行中はオートモードにし万が一に備えている.

このモード切替レバーにポカよけピンがあり,オートモードにしなければこのピンが取り付けられないようにしてある.駐機時扉が開いているときはこのポカよけピンを開閉レバーにタスキ掛けにかかっている帯にくるみこまれている.扉を閉めるためにはこのタスキを取らなければならない.タスキを取るとポカよけピンがでてくるという仕掛けだ.

更に乗務員は一連の動作が終わると,自己確認後別の乗務員と立てた親指を見せ合う.これが「ダブルチェック」だ.

もちろん全ての作業に「ポカよけ」「ダブルチェック」を入れているわけではなく,ポカミスが発生すると安全運行に重大な支障がある作業だけだろう.

非熟練によるミスは作業訓練で補えばよいのだが,それでもしばしばミスが発生する.

ある方から製品ラベルが傾いて貼られるというミスがなかなか無くならないというご相談を受けた.
この場合はラベルが傾いているという不良が工程内で見つかっているので「ダブルチェック」はできていると考えて良いだろう.(理想はラベル貼り工程で「ダブルチェック」がかかること)

またラベルを貼る位置には目印枠をつけてある.不完全だが「ポカよけ」もあるといってよいだろう.

それでもミスが発生する.
いくら作業訓練をしても発生する.
中にはものすごく不器用な人がいて,いくら練習しても上手にならない人はいる.こういう人を作業員として採用するのが間違いだが,まずは教え方を見直してみる必要があるだろう.

こういう作業の下手な人と上手な人(早くしかも正確に貼れる)との差を良く観察すると作業方法の違いが分かる.下手な人は目印線を水平または垂直にして非常にぎこちなく貼る.
上手な人は貼り付けるモノを少しナナメに置いて,目線も真上からではなく少し傾けて目標を見ている.

ただまっすぐ貼りなさいと言うだけではなく,上手くできる人のやり方を教える.それでもだめなら仕事を変わってもらうしかないだろう.


このコラムは、2009年7月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第105号に掲載した記事を修正・加筆しました。

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ミスをなくす作業方法

 人為ミスが発生すると、ミスの原因を十分に調べないで「作業者に再教育」「作業者に注意するよう指導」などという再発防止対策を、報告書に書いていないだろうか?
もちろん教育・訓練や指導は重要であるが、これでは効果を期待できない。

人為ミスが発生した原因を、行動まで分解して、どこに問題が有るのか突き止めれば、有効な再発防止をすることができるはずだ。

日本にはすばらしい工場がある。「日本で一番大切にしたい会社」で紹介されている日本理化学工業だ。

この工場は、知的障害者を積極的に雇用している。全従業員の70%は知的障害者だ。

知的障害を持った作業員たちが、工場で製品を作っているのだ。
当然ミスは頻発する。それをミスが起きないようにどんどん作業方法を改善してきたのだ。

例えば原材料の投入は、正確に材料配分を計量しなければならない。
量り間違えれば、全部不良だ。こういう工程も、障害者が担当している。

材料ごとに、材料の棚、コンテナ、投入用のバケツが同じ色にしてある。
そして計量用の分銅も同じ色だ。
このような作業方法の工夫によって、ミスが起きないようにしている。

こういうのがホンキの再発防止対策だ。
人為ミスが発生したときに、安易に「作業員の再教育」と言ってしまうのが、恥ずかしくさえ思える。


このコラムは、2011年10月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第228号に掲載した記事です。

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