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正解とは

 学校の試験は、問題に対して基本的には正解は一つしかない。
しかし現実の問題には、複数の答えがあるはずだ。

たとえば工場で製品の不良をなくす、と言う課題があったとする。
この課題に対して一番確実な解は「生産しない」だろう。
これを正解とするかどうかは、それぞれに事情が違う。しかし造らなければ生産不良は発生しない。

あらゆる問題に「制約条件」があるわけだから、「造らない」を解として採用するかどうかは別の話だ。ブレーンストーミングでアイディアがなかなか出てこないのは、「正解」にこだわりすぎているからではなかろうか?

論理的に考えても1+1が2にならないことはいくらでもある。
たとえば、白米1合と小麦粉1合を混ぜても2合にはならない。
水は100℃で沸騰するというが、それは1気圧環境下での話だ。

本来、問題解決時に求めるのは「正解」ではなく「最適解」と考えるべきだ。
従って垂直にナゼナゼを繰り返すのではなく。水平にもナゼを広げる方が多くの答えが見つかり、その中から最適解を選択することができるはずだ。
こういう発想を「水平思考」とか「ラテラルシンキング」という。

先週取り上げた、日本政府の「儲かる産業にシフトする」という方針が唯一の正解ではないと思う。


このコラムは、2021年10月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1206号に掲載した記事です。

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試行錯誤

 「試行錯誤」という言葉を見ていて、なんだか変だと感じた(笑)
英語に直せば「Try and Error」試しては失敗する。「Cut and Try」という言葉もある。上手くゆくかどうか分からない事を端から試してみる。

失敗するために試行しているような印象を持つのは、私だけだろうか。

上手くゆく方法をいくつも考え、その組み合わせで最善の方法はどれか検証する。つまり試行が目指すのは「錯誤」ではなく「正解」だ。
実験計画法、タグチメソッドなどの手法も試行錯誤を目指してはいない。効率よく試行、正解に至るための手法と言えるだろう。

つまり私たちが目指すのは、効率よく正しい答えを見つけ成果を得る事。試行錯誤ではなく試行成功だと思うのだ。


このコラムは、2019年6月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第840号に掲載した記事に加筆しました。

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問題解決の第一歩・認識

 先週のコラムでは、問題解決の第一歩は問題を正しく定義する事だ、と書かせていただいた。

完成品倉庫が狭いのが問題ではない。問題を正しく定義すれば、出荷量より多く生産する事である。

完成品倉庫が狭いという「現象」は簡単に認識出来る。
従って、完成品倉庫が狭いという解決課題を定義しがちだ。解決課題が間違っていれば、問題は解決しない。

しかし実際の生産現場では、問題を認識出来ていない事が多い。
認識は出来ていても、「こんなモノだ」という現実受け入れ型の「諦め」が改善のチャンスをつぶすことになる。

例えば、エンジンのクランクシャフトを鍛造加工して、要求精度に仕上げる。
この方法では歩留まりは70%ほどだそうだ。従って後工程で切削加工をする。これが「諦め」だ。

歩留まり70%を受け入れてしまうと、削り代(けずりしろ)をみこんで鍛造加工し切削加工を追加することになる。材料も追加加工もムダだ。

歩留まり70%を諦めなければ、方法を考えることになる。
鍛造加工前に、たたいてあらかた形を作る。これだけで歩留まりは90%になったそうだ。

ダイキャスト成形をする時は、金型を交換して数ショットはきちんとした製品が出来ない。これを「試し打ち」として諦めてしまえば、改善はない。
試し打ちがムダであるという認識を持つことにより、改善が出来る。

試し打ちがムダだという認識を持てば、なぜ金型交換後のショットがうまく行かないか考える。金型の温度が上がっていないから、材料が金型の隅まで回らない。では金型の温度を上げれば良いだけだ。
金型の温度を上げる方法はいくらでも思いつくはずだ。


このコラムは、2012年8月13日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第270号に掲載した記事に加筆したものです。

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問題解決の第一歩

 問題解決の手法は沢山ある。
問題解決の一番重要なステップは、まず始めに課題を正しく定義する事だ。

例えば、
「受注が多くて出荷が間に合わない」というのは課題ではなく、現象だ。
正しい課題は「生産能力がなりない」ということだ。

同様な例を挙げると、
「製品倉庫が狭い」というのは課題ではなく「出荷より沢山生産してしまう」
ことが課題だ。

出荷不良を「検査をしているのに不良が顧客に流出する」と課題定義してしまうと「検査を強化する」という不毛な解決案が出て来る。
正しい課題は「工程内で不良が発生する」という事であり、これに対策をすれば「工程内不良をなくす」という本質解決を目指すことになる。
もちろん一足飛びに、工程内不良をなくす事はなかなか難しい。暫定的に検査強化をする事もあるだろう。しかしあくまでも「暫定対策」であることを明確にしておかなければならない。

問題の表層を見入るのではなく、本質を見て課題を定義しなければならない。

もう一つ重要なのは、課題を「自責」で定義する事だ。

上述の「出荷が間に合わない」を、顧客の注文が多い(他責)とすれば自分たちでは解決が出来ない。生産能力不足(自責)と課題を定義するから改善が出来る。

極端な例を挙げたが、意外とこの落とし穴にはまっている例を良く見る。

従業員の能力が足りないから、単純作業だけさせる。というのは、課題を従業員の問題(他責)として定義しているから、効果的な問題解決が出来ない。
従業員の育成が不足している(自責)と課題を定義すれば、いくつも解決案が出て来るはずだ。

「他責」は愚痴やあきらめしか生まない。
「自責」が工夫と改善を生む。


このコラムは、2012年8月6日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第269号に掲載した記事に加筆したものです。

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