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イノベーション

 「マネジメント」は現在(組織、人員、市場、顧客、商品など)の秩序を維持すること。一方「イノベーションは」現在ある秩序を破壊し、新しい秩序を創造すること、言えるだろう。

イノベーションは変革であり革命と大袈裟に捉えてしまうと、なかなか手が出ない。金のかかる研究開発など中小企業が手を出すべきことではない。そんな消極的な姿勢ではいけない。金をかけずともイノベーションは起きる。

例えば、マーケティングの笑い話でこんなのがある。靴屋が新しい市場を開拓しようとアフリカに市場調査に出かけた。しかし靴を履いている人はほとんどおらず、靴の販売は不可能と判断した。しかし逆に考えれば未開拓の新市場だ。

技術革新をしなくてもイノベーションは起こせる。
冷蔵庫はコモディティ商品化しており、今やネットにつながった冷蔵庫、扉が液晶ディスプレイになっており中が確認できる、など訳のわからない方向に進化し始めている。
しかしシンプルな冷蔵庫を極寒地に「凍結防止食料庫」(冷却機能なしの保温庫)として販売すれば市場を独占できるかもしれない。

今や脱水機能や乾燥機能のない洗濯機は売れないだろう。しかし農家向けの作物洗浄装置としてなら、まだシェア獲得のチャンスがあるかもしれない。家電メーカであれば、ほぼ既存技術だけで開発可能だろう。

アイディア次第で、巨額の研究開発費を投資しなくてもイノベーションは起こせる。

巨額の開発投資をかけて開発した新素材を独占使用しても利益が上がるのは短期間だ。他の競合メーカも同様な、もしくはより高度な素材を開発する。
逆に特許を公開すれば、マーケットは大きくなる。業界全体が潤う。特許使用料でさらに新素材を開発すれば一石二鳥だ。


このコラムは、2020年12月11日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1070号号に掲載した記事です。

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QFD

 QFD(品質機能展開)とは顧客の要求を開発、生産技術、製造、品質保証の各工程でどのように実現するかを明確にするツールだ。
例えば顧客の要求事項が「可愛い」だとする。商品企画は「可愛い」を実現するため商品の特性を定義する。という具合に設計、製造、販売、品質保証の各工程が達成すべき特性に展開する手法だ。

以前勤務していた会社でもQFDを作成していた。どちらかというとこの作業は開発設計部門の仕事のように捉えられていた。顧客要求事項をマーケティング部門から聴取し、製品仕様を決定する。各工程への展開は新規の製造技術が要求されない限り従来と同じ項目を埋め込むことになる。

アリバイ的にQFDを作成しました、という形式主義だったように思う。

しかし従来とは少し違う市場向けの新製品を投入する。市場が同じでも従来にない製品ラインナップを投入する。という場合には力を発揮するはずだ。
特に部門間のベクトルを合わせる機能がある。技術試作品が完成してからマーケティング部門からNGを喰らうようなことは発生しないはずだ。

つまりQFDは新製品開発における社内各部門のコミュニケーションツールとして活用できるはずだ。


このコラムは、2021年6月18日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1151号に掲載した記事に加筆しました。

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イノベーション

 洗濯物を自動的にたたむ。しかも誰の洗濯物か見え分けて仕分けをする。夢の様な家電製品だ。セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズが開発した製品ランドロイドだ。ランドリィ+アンドロイド(スマホの事ではなく人造人間の意味)と言うネーミングも科学少年のまま大人になってしまった人間のココロを鷲掴みにする(笑)社名からして素敵だ。「七人の夢想家研究室」私の年代なら
TVドラマ「七人の侍」を想起するだろう。若い人ならばアニメ「ワンピース」を思い起こすかも知れない。

しかし、価格を聞いて一気に高揚は冷めた(笑)1台185万円から、上位機種は250万円ほどすると言う。既に予約が開始されているが、一般家庭に普及するためには、もう暫くかかるだろう。洗濯もたらいから、電気洗濯機、一槽式と進化し、乾燥まで自動化した。家事労働の軽減に大きく貢献している。ランドロイドも同じ様な(価格面での)進化を期待したい。

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの坂根社長は、商品開発に対してこう言っている。

「技術の先にイノベーションがあるのではなく、ニーズの先にイノベーションがある。だから手持ちの技術にこだわるのではなく、まずは適切なテーマ設定を行って、それを実現するための技術開発を行うことが重要だと考えた。」

CNET Japan」から引用

「洗濯物折りたたみ機「Landroid」が誕生するまで–社長が明かす紆余曲折の12年」

技術がなければ、イノベーションは起こせない。この事実が重すぎるために我々は、技術オリエントでイノベーションを考えてしまう。
「我々の加工技術で新製品を考えてみよう」
「この高機能素材の特性を応用した新製品を考えてみよう」
しばしばこのようなアプローチで新製品の開発を考えてしまう。

イノベーションが起きるのは、社会の要求(ニーズ)を満たす事が出来る技術(シーズ)を開発できた時だ。

ランドロイドは、家事労働軽減と言うニーズオリエントで開発された製品だ。
ランドロイドに使われている技術は、洗濯物を畳む「メカトロニクス」、洗濯物を認識する「画像処理技術」、どのようにたたむか判断する「AI技術」だ。

元々セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズのコア技術は「高機能複合素材」であり、それを活用した医療機器、ゴルフシャフトなどを開発している。技術オリエントで商品を考えれば、ランドロイドの開発はなかっただろう。

常識的なアプローチならば、現有顧客のニーズを深堀して、必要な技術を開発、製品を実現する、と言う手順になるだろう。このアプローチならば顧客ニーズの理解、販路構築のリスクを小さく出来る。

ゴルフシャフトは、既存技術を応用して、新規市場を開拓した。

今回のランドロイドは定石を破り、新規市場に新規技術で製品開発を行った。現有製品からの利益が十分にある。パナソニック、大和ハウス大和ハウスとの提携。これらが定石破りのリスクを軽減しているのだろう。「家庭用洗濯物自動折り畳み機」と言う新しい市場が出来上がるのか、期待して注視したい。

【編集後記】
残念ながらセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズは2019年4月に倒産している。
夢の洗濯機ランドロイドの新規技術開発が予想以上に難航したようだ。いきなり新規市場・新規技術を目指すべきではないという定石は生きているようだ。


このコラムは、2017年6月12日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第532号に掲載した記事です。

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