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良い工場は退屈である

 先週開催した今年最後の東莞和僑会定例会で、東莞にある日系工場・経理から、どのように組織文化を作ってきたか講演をしていただいた。

今年はコロナ禍のため東莞和僑会の活動は全てZOOM開催となった。例年ならば、工場を訪問し工場を見学して講演を聞く。何度も訪問しているが、その度に新たな気づきが得られ、素晴らしい工場に退屈することがない。

今週のタイトル「良い工場は退屈である」はドラッカーの言葉だ。
良い工場は退屈である言うドラッカーの主張は間違っているわけではい。
良い工場を訪問した者は退屈しない。しかし良い工場に勤務している者は退屈であると言う意味だ。

並の工場は適度に問題が発生し、その対応が必要であり退屈ではない。しかし並以下の工場は問題が発生し、その対応のために退屈などしている暇はない。
さらにレベルの低い工場は問題が頻発し、毎日のように問題対処が発生し激務となる。

では退屈な工場(良い工場)とはどう言う工場か、あらかじめ問題を予測して、対策がしてある。したがって問題は発生しない。まれに未知の問題が発生しても、それに対する対応がルーチン化されている。粛々と新たな対策が実施される。

退屈しない工場は、毎回問題の尻拭いでお祭り騒ぎとなる。
退屈しない工場と退屈な工場の違いは「尻拭い」と「未然防止」の違いだ。


このコラムは、2020年12月25日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第1076号に掲載した記事です。

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明治乳業のビン牛乳、さび混入 159万本回収

 明治乳業(本社・東京都江東区)は25日、大阪府貝塚市の関西工場で製造された瓶入りの牛乳とヨーグルトに赤さびが混入していたとして、関西2府4県の宅配用の5商品計約159万本を自主回収すると発表した。混入は微量で、健康への影響はないとしている。

 22日に顧客から指摘があり、関西工場を調べたところ、回収した瓶を洗浄する作業で、仕上げのすすぎに使う水のタンク内で赤さびが見つかったという。

(asahi.comより)

この手の事故の報道を見るたびに,どうして未然に防げなかったのかと思う.

生産設備は毎日点検しているはずだ.
すすぎ水のタンクの点検が行われていなかった.
または点検は行っていたが,赤錆を見逃した.

すすぎ水のタンクが点検項目から漏れていたのならば,点検項目に追加をすれば良い.
しかしそれだけでは不十分だ.製品に影響を与える可能性のある潜在事故を洗い出して,見直しをする必要がある.

点検項目に入っているが見逃した,この場合の対策はどうすれば良いであろうか.
「作業員に対して点検作業の教育訓練をする」という対策では不十分である.点検の基準はきちんとしていたのか,点検方法に問題はなかったのか,見逃した原因をきちんと解析をして対策を打たなければならない.

作業者が不慣れなためのミスだったとしても「教育をする」で十分とはいえない.
教育方法・資料,教育の時期・頻度について改善すべき事がないか検討しなくてはならない.

以上の対策が出来てもまだ不十分である.
これらは錆の発生を見逃すという流出に対する対策でしかない.
錆が発生するという原因に対する対策が足りていない.

あなたの工場では同様の問題が発生するリスクがないだろうか.
一度こういう問題を出してしまうと,回収のための費用損失が発生するばかりか,顧客の信頼を失うという致命的なダメージを受ける.

致命的な品質不良が発生する可能性のある事故を洗い出してFMEAなどを活用してあらかじめ対策を打っておく必要がある.
業種が違ってもこのような事故は社内を再点検する良いチャンスである.


このコラムは、4月28日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第31号に掲載した記事に加筆したものです。

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三菱重工製エアコン6機種に発火などの恐れ

 経済産業省は21日、三菱重工業製のエアコン室外機が焼ける火災が6月に鳥取県と愛知県で起きたと発表した。同社は経年劣化による発煙・発火の恐れがあるとして、76~81年に製造された一部機種について使用を中止するよう呼び掛けている。

(asahi.comより)

 この記事だけでは,原因が何かまったく分からない.
一般の消費者に対しては,事故の可能性があることを知らせ注意を喚起すれば十分だろう.しかし「当事者」になってしまう可能性があるものづくりに関連している人たちには,不十分だ.事故の原因を知らせ,水平展開を図る情報提供があってもよいだろう.

ということで製品評価技術基盤機構(NITE)のホームページで類似の事故を調べてみた.以下の事故情報がヒットした.

  • 事故内容:エアコンを使用中、突然ブレーカーが落ちた。
  • 事故原因:室外機の内部配線が、冷媒配管と防音材に挟まれていたため、運転中の振動により配線の被覆が摩耗し、露出した芯線が配管に触れて漏電したものと推定される。

ここまで書いてあると,この情報から「未然防止対策」を考えることができる.
具体的には内部配線の経路や固定方法を検討する際の「べからず集」を作ることができる.

さらにこの事故を抽象化して適用範囲を広げる.

「出荷後の動作環境で発生する絶縁不良」という抽象化をすれば,ケーブルによる配線だけではなくプリント基板の配線パターンとプリント基板上に実装された金属部品間の接触も考慮の範囲になる.

また「出荷後の動作環境」は振動による機械的磨耗だけではなく,経年変化による絶縁材料の劣化も対象になる.

高い勉強代(不具合損失)を支払う前に,他山の石を徹底的に学習するのがよいだろう.


このコラムは、2009年8月24日に配信したメールマガジン【中国生産現場から品質改善・経営革新】第113号に掲載した記事に加筆したものです。

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